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ビジャレアルが探究するサッカークラブの新たな形。異競技リーグワン・BR東京とのサステナブル契約は「ブランドの共鳴」

2026.01.07

ビジャレアルCF・佐伯夕利子氏に聞く、柏レイソルも取り入れた「知的財産」を活用する独自の世界戦略とは?』『柏はなぜ、ビジャレアルから学ぶのか?布部陽功FDは“もったいない”を解決したかった』『「柏レイソルの“軸”について考える機会になった」渡辺毅ADがビジャレアル研修で考え続けた「準備=地域共生や人間教育」という土台』の過去3回にわたってビジャレアルと柏レイソルの知的財産(IP)「アカデミーディべロップメント・プログラム」について取り上げてきたが、佐伯夕利子氏によるとビジャレアルは早くも独自性にあふれる次の一手を準備しているという。それが1つの形として実を結んだのが、異競技、リーグワン・BR東京とのサステナブル契約である。キーコンセプト「ブランドの共鳴」とは一体何なのか?

(写真提供:ビジャレアルCF、ブラックラムズ東京)

 人口約5万人の町のスモールクラブ「ビジャレアルCF」(スペイン・バレンシア州)が確固たる哲学のもとで知的財産を販売する戦略は、日本だけではなく世界中のスポーツクラブをまるで磁石のように引き寄せてきた。本格的なスタートからわずか6年で予想を超えるスピードと思いもしなかった範囲で、クラブが当初目標とした数値を超える。

 人口5万人の……と同クラブの前置きに必ず使うものの、日本での人口5万人規模の町の例は?となるとなかなかイメージできない。日本ならばバスケットボールで町おこしに積極的に取り組む能代市(秋田県)が23年の調査で人口4万9968人(政府統計ポータルサイトe-Statより)と同じ規模にある。能代に限らず人口5万人規模の日本の地方都市で、プロスポーツに積極的に取り組み世界中で求められる知財を販売して経営基盤を築く野心と経営を両立させるクラブはまだ誕生していない。

ビジャレアルIP購入の先駆者は読売ジャイアンツ

 世界戦略として始めた知的財産(IP)「アカデミー・デブロップメント・プログラム」は6年目を終え、すでに世界30カ国以上で展開する。Jリーグでは2025年に初めて柏レイソルが契約し3回のフェーズを終えたが、例えば知財を購入したオーストラリアのクラブは、1カ月かけてスタッフ数名がクラブに長期滞在する。プログラムの内容はこのようにカスタマイズされる。

 実は日本でいち早く育成の知財購入に手を上げたのは、プロ野球「読売ジャイアンツ」だった。異競技の交流と報じられたが実際には交流レベルの話ではなく、ジャイアンツが初めて設立した「U15ジュニアユース」でビジャレアルCFのアカデミープロジェクトを最大限取り入れるための有償のプロジェクトである。

左は読売ジャイアンツU15 ジュニアユース片岡保幸監督

 また、アカデミー組織を持たないDeNA横浜ベイスターズもビジャレアルCFの育成アカデミーの視察を現地で行った。

 高校が中心となって選手を育てドラフトで獲得し、戦力補強にはトレードで選手を起用する。プロ野球の伝統的なこうした循環の中でなぜ「育成」が注目されるのか。ビジャレアルCFの佐伯夕利子はその背景を説明する。

 「私たちのクラブは、レアル・マドリーやバルセロナのようなメガクラブではありません。桁違いの予算を持つ彼らに対してスモールクラブが世界を視野に入れた活動をどう展開するか、私たちは常に自分たちの強みとは何かを考えています。強みの1つは、メガクラブの“ブランドビジネス”ではなく、“レピュテーション(評判、評価、信頼)ビジネス”で、現代のフットボールは『信頼経済』の渦中にいる、といった分析もあります。ロゴ、ユニフォーム、グッズ販売といったブランドとの違いは、クラブの世界観や価値観、選手や経営陣のあり方、ファン・サポーターとの関係性、社会的テーマへの組織としての明確な姿勢と実践、財務の健全性といったものを見られているということでしょう。アカデミー・プログラムは唯一無二のメソッドで、そこには私たちクラブが学びを止めないという哲学が込められています。地域貢献をし、持続可能な社会を実現するための努力は競技の枠組みで考えるものではありません。勝利だけではないスポーツの根源的な価値を学び、進化したい私たちと同じに考える方々が、国境や境界線のないボーダレス、あるいは継ぎ目や途切れのないシームレスで垣根をどんどん超えて集まっているのではないでしょうか」

……

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Profile

増島 みどり

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年独立しスポーツライターに。98年フランスW杯日本代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞。「GK論」(講談社)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作多数。フランス大会から20年の18年、「6月の軌跡」の39人へのインタビューを再度行い「日本代表を生きる」(文芸春秋)を書いた。1988年ソウル大会から夏冬の五輪、W杯など数十カ国で取材を経験する。法政大スポーツ健康学部客員講師、スポーツコンプライアンス教育振興機構副代表も務める。Jリーグ30年の2023年6月、「キャプテン」を出版した。

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