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“トメルケル”で鹿島が変わる。鬼木達新監督のこだわり「気持ちと同時にやっぱり技術」

2025.02.05

2025注目Jクラブキャンプレポート #4
鹿島アントラーズ

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第4回は、J1優勝4回の新指揮官とともに2016年以来の王座奪還を目指す昨季5位の鹿島アントラーズ。技術があることで持てる選択肢が増える。始動初日から鬼木カラー全開のトレーニングを通して、どのようなチームに仕上がっていくのか。選手たちも口をそろえる「チャレンジ」の行方が楽しみだ。

「ミスしていいからどんどんチャレンジするように」

 1月7日に2025シーズンの鹿島アントラーズが始動した。監督として川崎フロンターレで7つのタイトルを獲得した鬼木達を迎え、さらに新戦力として昨季21ゴールでJ1得点ランク2位となったレオ・セアラ(←セレッソ大阪)を獲得。他にも両SBをこなせる小池龍太(←横浜F・マリノス)、左利きのCBであるキム・テヒョン(←サガン鳥栖)を補強した。昨季薄かったポジションに的確な人材を加え、前線にもFC東京にレンタルされていた荒木遼太郎が復帰。戦力的には近年になく充実した顔ぶれがそろった。2016年以来、国内タイトルから遠ざかっている鹿島が本気で再興を目指していることが、その姿勢からも伝わってくる。

 練習では、始動初日から鬼木監督の特色が出ていた。川崎Fの代名詞にもなっていたトメルケルのトレーニングにさっそく着手。鬼木監督が強調していたのは「足から足へ」ということ。最初のうちはできなくてもいいからパススピードを意識しつつ、ボールを止めることと早くパスを出すことが求められていた。監督の説明に耳をそばだてていると、相手の間に立った選手が、すぐに蹴れるところにボールを止められれば裏に走ったFWにもすぐにパスが出せる、といった趣旨の説明がなされていた。

 ただ、求められる技術は高く簡単に結果にはつながらない。宮崎キャンプではロアッソ熊本(J2)、ツエーゲン金沢(J3)、ファジアーノ岡山と練習試合を行い、勝利できたのは2試合目の金沢のみ。それも最初の45分はいい内容でなく、次の45分で修正した結果、3点を奪うことにつなげた。まだまだ、思うようなサッカーは展開できておらず、選手たちからはチャレンジすることを強く意識するコメントが聞かれている。

 キャンプ前の練習で接触、脳しんとうを起こしていた濃野公人は3試合目の岡山戦で初めて練習試合に臨んだ。他の選手よりも出遅れていたが、彼もチャレンジの重要性を強く訴えた一人だった。

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Profile

田中 滋

サッカーライター。08年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』にて鹿島アントラーズを担当。有料WEBマガジン『GELマガ』も主催する。著書に『世界一に迫った日 鹿島アントラーズクラブW杯激闘録』など。

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