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「よりシンプルに、勝つ確率をあげる」。捲土重来を期す、木山ファジアーノ。好スタートが切れた3つの理由と伸びしろとは?

2024.04.12

開幕早々に4連勝を飾るなど悲願のJ1昇格へ向けて好スタートを切った木山ファジアーノ。3年目の指揮となる木山隆之監督の志向は、よりシンプルに、勝つためのスタイルにシフトしている印象だ。選手層の厚みは増し、確実な伸びしろも期待できる。開幕前の期待値の高さどおり上位につける木山ファジアーノの進化とは何か。ファジアーノ岡山を見続けるライター寺田弘幸がレポートする。

攻守の原則をシンプルに

 ファジアーノ岡山にとってJ2で16年目となる2024年シーズン。3年目の指揮を執る木山監督が捲土重来を期す今季は、好スタートを切ることに成功した。

 開幕戦で栃木に3対0で勝利すると、第2節のいわき戦は退場者を出して試合終了間際に同点に持ち込まれたが、第3節からは試合終盤に相手を上回って1点差の勝負を制して4連勝を飾った。

 好スタートを切れた理由は、主に3つほど挙げられる。

 ・一戦必勝のスタンス

 ・経験豊富な選手の存在

 ・チーム内の競争の活況

 一つ目の「一戦必勝のスタンス」は、木山隆之監督が新体制発表会見のときから示してきたものだ。

 「今年はとにかくいろんなことをシンプルにしていくこと。今年のファジアーノに課せられたミッションはJ1昇格。この一点しかない。このメンバーと必ずシーズンが終わった後にJ1に行く。その覚悟を持って戦い切っていきたい」(木山監督)

 目標がシンプルで明確だから、手段も必然的にシンプルになっていく。「力強く勝つ。そういうチームにしたい」と宣言した指揮官は、プレシーズンに今年に揃った選手たちの特徴を踏まえ、実際にピッチの上で見極めながら攻守の原則をシンプルなものにしていった。

リミッターをかけずに前へ

 宮崎でのキャンプが終わり、ボランチを担う田部井涼は今年のチームの攻守をこう語っている。

 「攻撃時は長短のパスを使い分けるよりもロングフィードが大事で、質の高いボールを前に入れていくことと、自分も前に出ていくことの回数を増やしていかないといけない。守備については、けっこうハードです。キャンプではリミッターをかけずどんどん前から奪いに行って、多少裏を取られても後ろの3枚で広く守ることにトライしてきましたけど、今年は本当に後ろに守れる選手が揃っていると思うので、僕たちが勇気を持って前へ出ていくことが大事になってくると思います」

 攻撃は前へ。守備も前から。この基本原則を岡山は開幕戦からピッチに立った選手たちが全力で体現していき、相手コートでアグレッシブな攻守を展開した。それが体現できたことはデータにも現れている。9節終了時点でゴール期待値はリーグで3番目に高く、被ゴール期待値はリーグでもっとも低い。シンプルに勝つ確率を上げるサッカーができている。

ここまで6試合に先発している田部井。昨季横浜FCから期限付き移籍で岡山に加わり、今季完全移籍でファジアーノの一員となった(Photo: Hiroyuki Terada)

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ファジアーノ岡山

Profile

寺田 弘幸

1980年生、広島県広島市出身。サッカー小僧、サポーターを経て、2007年からライターとしての活動をスタート。『エル・ゴラッソ』にてサンフレッチェ広島とファジアーノ岡山を担当し、ファジアーノ岡山の情報はWEBマガジンの『FAGIGATE』でも精力的に発信中。広島に新サッカースタジアムができた喜びはとても大きく、岡山にもできたらいいのになと思う日々

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