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“特殊なことをしてはいない”=自然な原点回帰。吉田達磨監督新体制の徳島はどう変化しているのか?

2023.09.15

8月22日、徳島ヴォルティスはベニャート・ラバイン監督との契約解除と吉田達磨監督の就任を発表した。果たしてクラブは前指揮官に何を求め、何が達成されていなかったのか。そして新監督に代わってチームはどう変わったのか?

 「僕の志向したいサッカーは残りの期間ではまったく考えていません。練習を引き締めて、グループで戦い、攻守における基準を作り、整備し、それができるように徹底を図る。それ以外に、今、僕ができる仕事はありません」

 吉田達磨監督は自身が志向するスタイルについて問われると、就任記者会見でそう答えた。

 その意図は説明するまでもなく、吉田監督に志向するスタイルがないという意味ではない。残り11試合というタイミングに加え、J2残留というタスクを含めても、現実的に表現可能な最大値を目指すことに焦点を絞っていると受け止めることができた。

 そうは言っても指揮官が代われば色味が出ないわけではない。

 ただ、吉田監督が積み上げてきたノウハウや過去に指揮を執ってきたクラブで志向してきたものを見ても、徳島ヴォルティスと親和性があることは明らかだろう。

 「そもそもの僕のスタイルというか、自分の持っている物や表現したい物というのは徳島ヴォルティスが長年にわたって築いてきている物と枠で言えば変わらないと思っています。なので、トレーニングで何を徹底しようとも、その枠から外れることはないと思っています。1つになって向かっていく上での基準作りをしながら進めていけば、しっかりとしたチームが作られていくと思います。徳島ヴォルティスは選手の素材自体が伸びていくことで結果にもつながるクラブだと理解しています」

Photo: ©TOKUSHIMA VORTIS

ボール非保持型を「プラスα」ではなく「転換」?

 では、本題に。

 この先は編集部から依頼のあった「吉田達磨監督新体制の徳島はどう変化しているのか?」について。それを考察するためには、前提条件として今季を振り返る必要がある。

 降格危機を強いられるほどに苦しいシーズンを過ごしている原因について、取材者として現時点ではこう結論付けている。

 “ボール保持型を志向する徳島ヴォルティスに、ボール非保持型のスパイスを加え過ぎたこと”

 ボール保持型の土台に、ボール非保持型のメソッドを加える挑戦自体は間違っていない。むしろ、次なる一手としても、現代サッカーや世界の潮流に目をやっても、進むべき道として必然であることにも 疑いはない。

 過去に指揮を執ったリカルド・ロドリゲス監督やダニエル・ポヤトス監督も、ボール非保持型の戦い方について挑戦を繰り返してきた。しかし、どの方法も完璧に機能したとは言えず、最終的には選手たちの意見も取り入れながら多くのシーズンで[4-4-2]主体のミドルゾーンのブロックに落ち着く歴史を繰り返してきた。

 それでも、昨季終盤はポヤトス監督のボール非保持型の守備戦術の成果があった。クラブが志向してきたスタイルの延長にあり、編成している選手の特徴であり、様々な要素を加味した上でも現時点におけるパーフェクトに近い内容だったと結論付けている。その守備を発動するためには条件が必要だったが、ボールを保持しながら敵陣に進入し、敵陣で攻撃をしながらも同時にポジションを整え、ボールロストしたとしても直後に奪い返す。攻撃時間を可能な限り伸ばし、相手にカウンターのチャンスを与えないことに成功した。

 いわゆる即時奪回。

 しかし、“その守備を発動するためには条件が必要だった”と前置きしたように、ボール非保持時の全領域をカバーできてはいない。どの領域をカバーできていなかったかを平たく言えば、ハイプレスと呼ばれる守備。相手のビルドアップに対し、敵陣方向へ追い込む手法は未開拓のままだった。

 攻守の要を担ったCB内田航平も、昨年末に以下のように振り返っている。

 「徳島はショートカウンターのチームではないのでそんなやり方をする必要はないかもしれませんが、自分がボランチをやっていた経験もあるからこそ感じることとして、前から奪うオプションも持っていて良かったのかなとは思いました。やっぱり高い位置で奪えると、なおさらチャンスになりますし、バランスが乱れて突破されたとしても止める方法はきっとあると思います。……

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吉田達磨徳島ヴォルティス

Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。

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