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徳島ヴォルティス復調のキーマン、増田功作監督のユニークなキャリアが持つ価値

2024.06.03

厳しいチーム状態でバトンを受け、徳島ヴォルティスを上昇気流に乗せつつある増田功作監督。18年過ごした古巣・横浜FC戦を前に、48歳の苦労人監督のユニークなキャリアと、そこで得た経験が徳島の復調にどう関係しているのかを考察してみたい。

 降格圏に沈む苦しい序盤戦だったが第13節・愛媛戦(△0-0)で残留圏に浮上。前節・大分戦(〇2-1)の勝利で中位にも顔を覗かせ始めた。現状の順位は上振れも下振れもあり得る不安定なポジションではあるが、試合内容・結果ともに上昇傾向にあることに疑いはない。

 本稿では、シーズン途中から指揮権のバトンを受けて、ヘッドコーチから内部昇格する形で先頭に立つ増田功作監督に焦点を当てた。

クラブ全体を見渡す広い視野

 徳島加入以前の主な経歴を見ていくと、横浜FCの在籍が最も長い。1999年から2004年までは選手として、2009年から2020年まではトップチームや強化部などに立場が変わって在籍。1999年から在籍しているということは、横浜FC誕生も、その背景も肌で感じてきた1人。

 そういった経緯もあり、取材時に「横浜FC」というキーワードが経験談として出てくることは多い。そして、様々な経験をしてきたからこそ、トップチームの話だけではなく「会社」「フロント」「営業」といった裏方を指すキーワードが出てくることも多い。

 事実、前述の愛媛戦でもフロントのあるスタッフに対して粋な計らいをしている。

 今季、常勤で勤務していた谷直和取締役が出向元の定年によって退任された(あらためて14年間ありがとうございました)。そのことを知った増田監督は愛媛戦で試合前のロッカールームに迎え入れた。

 「クラブは設立20周年目、ダービーは4年ぶり。谷さんは、そんな歴史を長く知る方。僕は横浜FCに長く在籍させてもらった経験があったので、働いている方々のクラブへの愛着は理解できていて、ましてや役員の方です。地域の子どもたちからお年寄りの方まで、ファンや協力してくれる方を築いてこられた方。退職されるという話を聞いて、俺がダービーの話をするよりも、そういう歴史を知る方に話してもらった方がいいんじゃないかと思ってお願いしました。選手たちもダービーにお客さんが来てくれるというのは、クラブを裏方で支えてくれた方がいるからだとあらためて感じてくれるだろうとも思ったからです」(増田監督)

 Amazon Prime Videoで公開されている『オール・オア・ナッシング ~アーセナルの再起~』の第2話で『ノース・ロンドン・ダービー』というエピソードがある。30年間にわたってアーセナルを撮り続けてきたカメラマンが登場し、ダービー直前のロッカールームに招かれて選手たちに語りかける場面が収録されている。増田監督は、その番組から着想を得たようだ。勝利することはできなかったものの「一生の思い出になりました」(谷さん)と徳島ヴォルティスの歴史に新たなエピソードが1つ加えられた。

 着眼点がトップチームの指導者目線というよりも経営者目線のようなところがある。一般的な選手出身の指導者ではなさそうな感覚に興味を持った。バックグラウンドを探ってみると、やはり意外な経歴があった。

会見で質問に答える増田監督(Photo: TOKUSHIMA VORTIS)

ブラジル留学前の1年半のバイト生活

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増田功作徳島ヴォルティス

Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。

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