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まさにグアルディオラという支配の前半と、今季を象徴する撤退の後半。CLファイナリストが見せた2つの顔【マンチェスターC 4-0 Rマドリー】

2023.05.21

終わってみれば4点差がつく結果となったCL準決勝第2レグのマンチェスター・シティ対レアル・マドリー。昨シーズンのリベンジを果たしたシティは、1-1のスコア以上に苦戦を強いられた第1レグからいかなる修正をチームに加えてきたのか。対するレアル・マドリーはどう応じたのか。らいかーると氏が分析する。

 サンティアゴ・ベルナベウで行われた第1レグの結果は1-1。エティハド・スタジアムで行われる第2レグにおいて、敵地でらしくない試合内容に終始してしまったマンチェスター・シティがどのような策に出るのかが注目された。

 第1レグを簡単に振り返ると、試合のオープン化を受け入れることで戦術の幅を手に入れたシティが、オープン化を得意とするレアル・マドリーに苦戦する形となった。日本のことわざで言えば、餅は餅屋。シティにとっての餅はなにか? 彼らが餅屋であるために必要なこと、それは勇気だった――そんな第2レグを振り返っていく。

第1レグからのシティの修正:地上戦にこだわったビルドアップと枚数をかけたボール保持攻撃

 シティのキックオフで始まった展開に対して、レアル・マドリーはアーリング・ホーランドへの警戒を全面に押し出す素振りを見せた。これは第1レグとまったく同じである。ただ、ホーランドを警戒しつつも[4-2-3-1]でプレッシングを実行していく。とはいえ4バックは後方に控えていたので、ボールを奪い切るというよりは、前線の選手たちによる今日の様子見という意味もあったのだろう。

 レアル・マドリーのプレッシングに対して、シティはできる限り地上戦で臨む姿勢を示す。セントラルハーフたちに監視されているイルカイ・ギュンドアンやケビン・デ・ブルイネを無理に下ろすことなく、ビルドアップ隊だけでボールを運ぶ意思を見せた。なお、ギュンドアンたちが監視されている時には1トップの選手が下りてきてボールを受けることをプレー原則としているが、その役割をホーランドがこなしていたことは印象的だった。ホーランドには前線にいることで相手を警戒させる役割も与えられているが、この試合のノルウェー代表FWはボールを保持するチームの1トップによく課されるタスクも行っているようだった。

 レアル・マドリーは、プレッシングの際に数合わせを行わなかった。それもあって、シティがレアル・マドリーを押し込む展開になっていく。第1レグもそんな雰囲気があったが、この日のシティは勇気を忘れてこなかったようだ。特にそれが表れていたのが、マヌエル・アカンジ、カイル・ウォーカーの立ち位置。第1レグよりも前に設定されており、その関係性によって中央をルカ・モドリッチ、ビニシウス・ジュニオール、ロドリゴで守るレアル・マドリーの狙いは崩されることとなる。

 ボールを持った選手を放棄することで相手を困らせるレアル・マドリーの作戦に対しては、さっさとサイドにボールを運びジャック・グリーリッシュとベルナルド・シルバに託す形が多かった。第1レグでは相手のダブルチームでの応対に苦しんだ両者だったが、この試合では様相が異なった。ウイングにボールが入った時、ギュンドアンやデ・ブルイネらが横のサポートを必ず行うことで、カバーリングを行うレアル・マドリーの選手を引きつけることに成功。さらにアカンジ、ウォーカーが後方サポートを行うことで、レアル・マドリーのウイングの選手がダブルチームに加勢しにくい状況を作ることに貢献していた。

 ボールを保持し、相手を押し込んだ時に枚数を変化させることを選んだシティ。オシムさんの言葉を借りれば、「もしロナウジーニョが戻って守備をするところまで追い込んだら、彼はロナウジーニョではなくなる」作戦である。ただこの言葉には続きがあって、ロナウジーニョを守備に奔走させようとしたら、ロナウジーニョは守備に奔走してくれなかったのだが。なお、ロドリゴとビニシウスにはこの試合に関しては守備のタスクがそれなりに割り振られていたのだが、彼らにとって非常に困難な仕事となった。ビニシウスからすればストーンズにつけばウォーカーが空き、ウォーカーにつけばストーンズが空く仕組みになっていた。

 このかみ合わせによる恩恵を最も受けた選手はグリーリッシュだろう。ギュンドアンとアカンジのサポートによって、ダニ・カルバハルとの1on1に集中することできたグリーリッシュは、簡単にエリア内でプレーすることができていた。グリーリッシュのチャンスメイクの機会は増大し、シティの最初の決定機は彼のクロスから始まっている。

勇気あるプレッシングの決断

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UEFAチャンピオンズリーグマンチェスター・シティレアル・マドリード

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

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