SPECIAL

こだわりを捨てたグアルディオラ。最後は驚愕の“撤退守備”で準決勝進出を手繰り寄せる【バイエルン 1-1(2戦合計1-4) マンチェスターC】

2023.04.20

第1レグを終えて3-0。点差が開いた状態で迎えた第2レグでバイエルンはいかに逆転を目指し、対するマンチェスター・シティは逃げ切ろうとしたのか注目を集めた強豪対決で交錯した両者の思惑とピッチ上での攻防を、らいかーると氏が詳らかにする。

 第1レグを0-3で落としてしまったバイエルン。このスコアの差をどげんかするためには、マンチェスター・シティにボールを保持させている暇はない。そんなプランを携えて、この第2レグに臨まなければならない。会場は本拠フースバル・アレナ・ミュンヘン。諦めるにはまだ早い舞台だ。トーマス・トゥヘルの策とバイエルンの生き様に対して、グアルディオラ×シティがどのように対抗するかが注目の試合となった。

 第1レグのテーマはプレッシングだった。シティはボール保持者へのプレッシングを、バイエルンはビルドアップの出口をケアする策で試合に臨んでいた。第1レグの後半にシティが外切りプレッシングへと変更したことで、相手にプレッシングの配置が整うまでの時間を与えながらも、ボール保持者とビルドアップの出口となる選手へのケアを両立させることに成功。シティが試合の主導権を握る展開となった。

二匹目のドジョウを狙うシティとバイエルンの対抗策

 勝ち抜けの権利を得るためには少なくとも3得点が必須となるバイエルン。時間が経過すればするほど優位になっていくシティに、まったりとした時間を与えるわけにはいかない。シティのボール保持に対して延々とプレッシングをかけ続ける展開になれば、その時点で万事休すと言えるだろう。よって、序盤のバイエルンはエデルソンまで届くプレッシングをかけることで、シティがボールを保持する時間を削りにかかった。

 二匹目のドジョウを狙うと言わんばかりに、シティの“自己紹介”は第1レグで見せた外切りプレッシングであった。アーリング・ホーランドがベルナルド・シルバへ盛んに指示をする場面があったように、ホーランドとケビン・デ・ブルイネが背中でヨシュア・キミッヒとレオン・ゴレツカを消すこと、そしてCBへのプレッシングはSBへのパスラインを遮断しながら、サイドハーフコンビが相手のCBまで出ていくことが約束事になっているようだった。特に、ベルナウド・シルバが前に出ていく場面が目立っていたことが印象に残っている。

 その技は第1レグで見せたやん!と言いたくなりそうなバイエルンは、深い位置からのビルドアップによって相手を牽制する。その牽制によって手に入れた時間によって、ショートパス、段差を使ったロングボールでボールを前進させていく。ただし、文字通り優位な状況というほどでもなかったことは記しておきたい。

 前半のバイエルンのキーマンはキングスレイ・コマンだった。ナタン・アケとマヌエル・アカンジのSBコンビに抑え込まれてしまった第1レグと比べると、特にコマンの吹っ切れたかのような仕掛けの連続はシティに脅威を与えていた。加えて、第1レグではビルドアップの出口として機能していたジャック・グリーリッシュは外切りプレッシングをするのか、それともバンジャマン・パバールを抑えるのか、内側に絞ってパバールにボールを出させるのかと選択肢が多くある中、変化する相手と状況に応じてルールが変化するシティの守備ルールの前に不安定さを露出していた。その不安定さが、コマンにボールを届ける機会を与えることに繋がっていく。

 時間の経過とともに、バイエルンのプレッシングはエデルソンまでは追いかけなくなっていく。[4-2-3-1]をベースにシティの[3-2]ビルドアップを止める算段になっており、1トップのエリック・マキシム・チュポ・モティングがルベン・ディアスを抑え、残りの選手がボールサイドにスライドする形をメインとしていた。

 対するシティはロングボールを蹴っ飛ばしながらも、わずかな隙間を見逃さずにボールを前進させることに成功させていく。特に、サイドに流れるデ・ブルイネへの監視が第1レグほどに激しくなかったことはその要因の1つだろう。ただし、前半に与えたバイエルンの2つの決定機はいずれもシティのビルドアップミスから生まれていた。44分のゴールキックを遠くに蹴っ飛ばすエデルソンという景色はなかなかレアだったと思う。なお、蹴っ飛ばされたボールはそのままサイドラインを割っていた。

いつもとは程遠かったシティのボール保持

……

残り:3,076文字/全文:4,881文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

UEFAチャンピオンズリーグバイエルンマンチェスター・シティ

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

関連記事

RANKING

関連記事