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J1開幕から全試合で得点中。アルビレックス新潟が誇る「崩し」の原理を解き明かす

2023.04.06

J1第6節時点で2勝2分2敗のアルビレックス新潟だが、いずれの白星もサンフレッチェ広島(1-2)、川崎フロンターレ(1-0)と昨季上位勢から挙げたもので、ここまで全試合で得点中だ。その起点となる昇格組とは思えない華麗なパスワークの秘密を、西部謙司氏に解き明かしてもらった

川崎を上回る狭小パスワーク集団

 Jリーグ第6節終了時点で12位。今季昇格してきたチームとしては悪くない戦績だが、第5節(浦和レッズ戦)と第6節(名古屋グランパス戦)での連敗がなければ上位につけていたはず。敗れた2試合でもプレーのクオリティでは優っていた。

 名古屋戦は36分に舞行龍ジェームズが退場になってから名古屋のペースになったが、それまでは1点を先行して内容的も圧倒していた。プレーぶりからすれば12位はむしろ不本意かもしれない。

 新潟の長所は攻撃力。リーグ戦6試合すべてで得点していて、パスワークの質は上位レベル。もしかしたら一番上手いかもしれない。現在はFC東京を率いているアルベル監督がJ2時代に仕込んだパスワークはより洗練されてJ1でも十分効果を発揮している。

 トップ下で目覚ましい活躍ぶりの伊藤涼太郎の存在は大きいとはいえ、ひと味違うパスワークが目を引く。

 第4節の川崎フロンターレ戦では川崎の包囲網をかいくぐるパスワークの冴えがあった。川崎の相手陣内でのパスワークは他チームより距離感が近い。そしてそこでボールを失っても直ちにプレスして奪い返せるのが強みだ。狭いパスワークの後のプレッシングなので相手チームはより狭い場所を突破しなければならないが、川崎より狭いエリアでパスを回せるチームなどこれまではいなかった。今季の川崎は自陣でのパスワークに苦労しているが、攻め込んだ時の攻守のアドバンテージは維持している。ところが、新潟は川崎の包囲を素早いパスワークで打開できていた。これまでそれができたチームはなかったのだが、ついに新潟が現れたわけだ。

アルビレックス新潟対川崎フロンターレのハイライト動画。伊藤涼太郎のボックス外からのミドルシュートが決勝点となった。伊藤のゴールは2:11~

「1対1」をしない「門を通すパス」の原理

 新潟のパスワークの特徴として「門を通すパス」が挙げられる。

 ここで「門」と表現したのは、守備側の2人の選手が並んでいる状態のこと。その2人の間を通過するパスが多用されている。そもそもショートパスをつないで前進しようとするなら門を通過しないわけにはいかないのだが、新潟はそれがしっかりできていて、他のチームとの違いになっている。

 東京五輪でU-23日本代表の田中碧がスペインに敗れた後、「僕らは1対1をしているけれども、彼らはサッカーをしている」という意味のコメントをして話題になっていたが、新潟のパスワークが優れているのはまさに「1対1」をしていないところにある。……

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J1アルビレックス新潟

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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