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世界準優勝、五輪落選、J2降格、人生初の契約満了…激動の20代から30代の追憶。大宮アルディージャ・南雄太インタビュー(中編)

2023.03.15

いわゆる黄金世代のGKでは最後の現役選手となった。高校1年生で全国制覇を経験し、世界大会の準優勝も味わった男は、数多の出会いと苦労と喜びの中で濃厚なキャリアを積み上げ、43歳となった今でもJリーガーとして日々のトレーニングと向き合っている。南雄太。プロ26年目のシーズンに挑んでいるレジェンドが、今までのサッカーキャリアを包み隠さず語り上げるインタビュー。中編では日本サッカー史上に残るワールドユース準優勝、シドニー五輪メンバーからの落選、正守護神に駆け上がりながらJ2降格や契約満了も突き付けられた柏レイソル時代を振り返ってもらう。

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1999年ワールドユース準優勝の思い出


――1999年のワールドユースの話を先にしちゃいましょう。初戦はカメルーンに1-2と黒星スタートでした。

 「その試合は負けましたけど、本当に終盤のパワープレーみたいな形で点を獲られただけで、カメルーンを圧倒していたんですよ。その後にアメリカとイングランドがやっている試合を前半だけ見て帰ったんですけど、『これはどう見ても、オレらが一番強いだろ』と。案の定、そのあとはアメリカとイングランドに2連勝して、グループを1位で抜けて、ポルトガルと対戦したんですよね」


――決勝トーナメントの初戦がポルトガル戦。PK戦での勝利でした。

 「ポルトガルはメチャメチャ強かったです。シモンもいましたし、五分五分の展開で、本当にいいチームでしたね」


――試合途中にポルトガルのGKがケガをして、フィールドプレーヤーがGKになって。

 「そのキーパーにバンちゃん(播戸竜二)のシュートがキャッチされて(笑)。マジで『おい!』と思いましたけどね。超決定機だったのに、素人キーパーにキャッチされるって(笑)。ヒーローになるはずが、まさかのキャッチ!本人もネタにしていましたからね。『キャッチされるって!』って」


――PK戦も相手はそのフィールドプレーヤーがGKをやったんですよね?

 「そうです。だから、自分が1本止めれば絶対に勝てると思っていました。ウチは絶対外さないだろうと」


――準々決勝でメキシコに勝って、準決勝でウルグアイに勝っています。

 「ウルグアイは強かったですね。結構苦戦しました。メキシコには余裕で勝ったイメージです。やっぱりそれぐらいのメンツがいました。モト(本山雅志)も凄かったですよ。それこそ今の[4-3-3]の時代にいれば、三笘(薫)選手じゃないですけど、あれぐらい凄かったと思います。しかも当時の[4-4-2]の中盤は、サイドハーフが中に入るボックス型が主流で、外に張るということがほとんどなかったので、今の時代でより生きる選手かなと。あのチームは周りも上手かったですし、仕掛けてくださいという状況でモトが行く感じでしたね」

「チームメイトを見て、『コイツら本当に頼もしいな』と思っていました」


――絶対に楽しかったですよね、大会中。

 「超楽しかったです(笑)。チームメイトを見て、『コイツら本当に頼もしいな』と思っていました。だって、満男とヤット(遠藤保仁)と伸二が中盤にいて、イナがベンチですよ。そんなメンバー、なかなかないでしょ。それでモトが左で、トモちゃん(酒井友之)が右で、フォワードがタカと永井くんでしょ。『そりゃ強えーわ』って感じでしたよ、それでも中盤が本当に凄かったです。どことやっても、日本の方が上手いと思っていました。スペインだけは別でしたけどね。でも、決勝も伸二がいたらもうちょっと違う試合になっていたんじゃないかな。しかも“ファイブステップ”っていう、キーパーが何歩以上歩いちゃいけないみたいな、昔だけあったルールで僕がファウルを取られて、そのフリーキックをジャンプした壁の下を通されて先制されたんですよね」


――決勝で当たったスペインとはかなり力の差を感じたんですね。

 「スペインは全然違いましたね。もう1人1人が本当に上手でした。“止める、蹴る”の能力もそうですし、チャビは本当に凄かったです。ボールなんて取れないですから。育成年代のスペインは当時から今みたいな感じでしたよ。その前のワールドユースでもスペインとやっていますし、あの当時であのサッカーができあがっていましたから。それは僕らがもっとキャリアを進めた時に、あれだけ強くなるわけですよね。チャビがいて、カシージャスもいて、プジョルもシドニーオリンピックは出ているんですよね」


――世界で準優勝まで駆け上がったというのは、改めて今から考えるとキャリアの中でどういう位置付けだと捉えていますか?
……

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南雄太

Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!

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