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伊東の相棒はアーセナルの未来。17戦無敗スタッド・ランスを牽引するフォラリン・バログンの今

2023.03.01

リーグ1でキリアン・ムバッペと熾烈な得点王争いを繰り広げているのが、アーセナルからスタッド・ランスにレンタル中のフォラリン・バログンだ。ガナーズの下部組織出身者ながらトップチームでの記録は公式戦10試合2得点。昨季途中から貸し出された英2部ミドルズブラでも21試合3得点に終わっていたイングランドU-21代表FWは、なぜフランスの地でゴールを量産しているのか。現地在住の小川由紀子さんがレポートする。

 つい先週まで、リーグ1の得点ランキング首位には、見慣れたエッフェル塔のマークではない、別のクラブのエンブレムが鎮座していた。

 その選手の名は、スタッド・ランスのストライカー、フォラリン・バログン。今季これまで15得点を挙げている、ニューヨーク生まれロンドン育ち、21歳の気鋭のストライカーだ。

 21節のロリアン戦でハットトリックを決めると、バログンは得点ランク首位に浮上。25節にキリアン・ムバッペが2ゴールを決めて単独首位に躍り出たが、それまでトップのゴール数を維持していた。今季初めてフランスの地を踏んだ新人ストライカーからすれば、実に見事な成績だ。

 バログンはこの夏、プレミアリーグのアーセナルから買取オプションなしの期限付き移籍でスタッド・ランスに入団した。昨シーズンは、全コンペティションあわせて11得点5アシストをマークした下部組織出身のウーゴ・エキティケがスタッド・ランスの主砲だったが、夏のメルカートでパリ・サンジェルマンに引き抜かれたため、その穴を埋めるべく補強したのがバログンだった。

 すると彼は、64分から途中出場したマルセイユとの開幕戦でさっそく初ゴールをマーク。試合は4-1で敗れたが、終了間際に一矢報いた価値あるゴールで、すぐさまファンのハートを射止めた。

それ以降は、ケガで欠場した2試合を除き、2試合以上の間隔を空けることなくコンスタントに得点を積み上げている。10月中旬に監督が交代した後も、チームのスタイル自体は大きく変わることなく、好調な得点ペースを維持している。

 エキティケはよりウイングタイプの選手だったが、バログンはトップが主戦場のセンターフォワードだ。よってクラブは、エキティケと同じ役割をしてくれる選手を探してバログンをリクルートしたわけではない。スタッド・ランスのテクニカルスタッフは数年前からバログンに目をつけていて、メルカートの季節がくるたびにアプローチしていた。よってこれは、クラブ側にとっては念願かなっての獲得であり、彼がチームスタイルにスムーズにフィットしたことは、「驚き」、というより「狙い通り」だったわけだ。

 オフサイドすれすれのタイミングを狙ってディフェンスラインの裏へ抜け出すうまさや加速の良さは彼が自負する持ち味の一つだが、ディフェンダーを背負った状態でパスを受けて、一瞬で向きを変えてシュートを打てるキープ力や対人プレーの強さ、巧みなトラップで追っ手を散らすテクニカルな面も持ち合わせる。178cm66kgと間近で見ると細身だが、ピッチ上ではゴリゴリ体を張ったフィジカルプレーも際立つ。

“美味しい”パスをくれる同期・伊東の存在

 ウィル・スティル新監督は[4-2-3-1]を多用しているが、オスカー・ガルシア前監督は2トップを採用していた試合もあり、9節のトロワ戦では最前線でコンビを組んだバログンと伊東純也がそろってゴール。バログンが12分に決めた先制点は、伊東の右サイドからのクロスにぴったり合わせたものだった。

 公式記録を見て、2人の連携からゴールとなったのはこの1本のみ、というのが意外に思えるほど、実際の試合では、2人のコンビネーションから多くのチャンスが生まれている。

 同じ昨年の夏に入団した伊東とバログンについては、地元メディアの記者たちも、

 「彼ら2人の相性はバツグン」

 と、今季の好調の要因の一つに挙げていて、2人は実際、ピッチの中でも外でも、とても気が合っているらしい。

 伊東は“同期”のバログンについて、「アイツは得点力がありますし、裏への抜け出しがうまいんで、うまく自分がボールを受けたらスペースを狙う、というのは意識していますね」と語り、バログンも伊東について……

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スタッド・ランスフォラリン・バログンリーグ1伊東純也

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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