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“超”ハイペースな昇格に隠された信念。J2まで辿り着いたいわきFCが貫く挑戦者のマインド

2023.02.17

いわきFCの躍進が止まらない。2016年に始動したプロジェクトの元、“超”ハイペースな昇格を繰り返したチームは、7年でとうとうJ2のステージまで辿り着いた。では、彼らはこの未知なる新世界へ、どういうフィロソフィーを、どういう信念を持って、挑もうと企図しているのだろうか。チームを誰よりも近くで観察してきた福島民友新聞の小磯佑輔が、それを丁寧に説き明かす。

挑戦を止めないクラブの信念が引き寄せた“超”ハイペースな昇格

 ぶれない信念の下、どこよりも急な階段を駆け上がってきた。

 始動から7年。県2部リーグから始まったいわきFCは8シーズン目の今季、初のJ2に挑む。「超」がつくほどのハイペースな昇格ぶりを見せてきたいわきだが、その本質は「筋トレ」にとどまらず、さまざまな面で挑戦を止めないというクラブの信念にある。厳しさ増すJ2にあって、むしろ挑戦を加速させた感すらある。

 一昨年12月、県1部からJFLまでの5年間で指揮を執った田村雄三監督(現GM)が退任し、後任探しが始まった。クラブは「新たに監督を目指す若手にチャンスを与えたい」という考えから、設けた条件は「Jクラブでの監督未経験」「40代」「若年層の育成経験」の三つ。この条件の下、サッカーのコンセプトも合う村主博正氏に白羽の矢が立った。

 「いわきらしさ」である縦に速いダイナミックなサッカーを引き継いだ村主新監督は、序盤から快進撃を見せる。第2節でSC相模原を相手にJ初勝利を上げると、第8節で福島ユナイテッドFCとの「福島ダービー」を制して、初めて首位に立った。その後も安定して勝ち点を積み重ね、第19節からは一度も首位を譲らず、2試合を残して優勝を決めた。通算成績は23勝7分4敗の勝ち点76。72得点23失点はどちらもリーグ最高の数字と、圧倒した。

J3優勝セレモニーでシャーレを掲げる村主監督(Photo: ©福島民友新聞社)

就任2年目。村主博正監督のぶれないサッカー観

 その戦い方はシーズンを通してぶれないものだった。

 システムは[4-4-2]。大きな特徴は攻守両面で見せる極端なコンパクトさだ。守備ではサイドに誘導した際に、ピッチのおよそ縦半分までに選手が絞って密集をつくり、ボールを刈り取る。奪った後の攻撃もボールサイドで攻めきることを基本とし、選手同士の距離感を崩さない。そのため奪われた後の即時奪回が可能となり、攻守に切れ目ないサッカーを展開した。指揮官は語る。

 「個の能力が高いと距離をとっても打開できるけど、そうじゃないとみんなでチャレンジ&カバー、集団で戦わないといけない。選手それぞれ足の速さや守備範囲が違う中、『自分たちの距離』を考えないといけない。例えば、SBのリク(嵯峨理久)やマサル(日高大)のポジショニングを危ないと思う人もいると思う。高すぎたり、相手をマークしていない(から危ない)と…。でも裏を取られても間に合う距離で彼らはサッカーをしている。だから怖くない」

 ぶれなさの裏には監督初挑戦ながら確固としたサッカー観がある。村主監督は自身の一番の強みを「選手の時から移籍を繰り返したこと」とし、こう続ける。……

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J2リーグいわきFC

Profile

小磯 佑輔(福島民友新聞社)

1996年1月生まれ。大学卒業後の2020年、福島民友新聞社に入社。翌21年にいわきFCの担当記者となり、2度の昇格を取材した。小中高時代は打つより投げることの好きな野球少年。大学時代にサッカーの面白さに出会って以来、毎週の海外サッカー観戦を欠かさない。

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