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徳島新監督は元ソシエダの分析チーム責任者。35歳スペイン人、ラバインのチーム作りとは?

2023.02.13

リカルド・ロドリゲス、ダニエル・ポヤトスと続いた徳島ヴォルティスのスペイン人監督路線。今季からチームを率いるのは、強豪レアル・ソシエダで分析チーム責任者を務めていた35歳の新鋭、ベニャート・ラバイン。果たして、新世代監督のチーム作りはどのようなものなのか――キャンプを取材している柏原敏氏が考察する。

“軍師”タイプではない。覆された先入観

 ベニャート・ラバイン監督、26日後。

 徳島ヴォルティスの2023シーズンは1月9日の新体制発表会で幕を開けた。4日間の高知キャンプ、12日間の宮崎キャンプを経て、1月31日以降は徳島県で最終調整が行われている。そして、記者がこの原稿を書き始めたのが2月3日。

 26日間で見えてきたラバイン監督。全貌はまだわからない。しかし、徐々に浮かび上がってきたものもある。

 ラバイン監督の経歴を振り返ると、肩書きには“分析担当”の記載が目立つ。世代別スペイン代表、クラブチームではエルチェCF(スペイン)やリーズ・ユナイテッド FC(イングランド)をはじめ、直近で所属していたレアル・ソシエダ(スペイン)では18年~22年まで分析担当の上位役職であろう“分析チーム責任者”を務めている。

 「“分析担当”とは?」

 最初に抱いた率直な疑問。勝手にイメージしたのは試合に対してどのような戦い方が効果的か、セットプレーで得点するためにはどのような方法が効果的かなど、『対戦相手』を分析しながら知略で勝利をもたらす戦略部門。三国志でいう諸葛亮(孔明)のような軍師を想像した。

 しかし、実際は違った。

 もちろん対戦相手の分析をすることもあるそうだ。しかしながら、相手よりも「自分たちの選手やチームの分析に時間を費やしていました」(ラバイン監督)。自分たちを分析するとはいかなることなのか。追加質問をすると、「監督のスタイルにもよると思いますが、ラ・レアル(レアル・ソシエダ)では監督のスタイルがはっきりしていました。なので、そのスタイルに対して“できていないプレー”をピックアップするなど、監督のスタイルにより適応させるための視点を持ちながら分析していました」(ラバイン監督)

 合点。

 監督が指し示すコンセプトという眼鏡をかけ、そのフィルターを通した時にイレギュラーなことが自チーム内で発生していないかどうかを見極めるような役割を担っていたと想像できる。フットボールにおいて、どんな戦い方が強いか弱いかという正解は存在しない。攻めようが、守ろうが、一長一短ある。しかし、明らかなのは、チームのコンセプトに基づいた動きを全員で共有できている組織は勝利する確率が上がり、その逆は敗戦する確率が上がる。それらは40試合もすれば収束点に至り、順位が確定する。……

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J2ベニャート・ラバイン徳島ヴォルティス

Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。

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