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『最強のチャレンジャー』川崎フロンターレの新しいビルドアップ、選手たちがつかんだ手ごたえ

2023.02.13

Jクラブのキャンプを見た!#3

2月の開幕に向け、キャンプを張り着々と準備を進めているJクラブ。W杯の影響もあり、例年より長いオフを経て迎えたキャンプでのチームの仕上がり具合はどうなっているのか。現地で取材した番記者・ライターがレポートする。

最強のチャレンジャー

 2023年のチーム始動日にあたる1月9日の練習前に鬼木達監督はクラブハウスでミーティングを行い、選手たちに『最強のチャレンジャー』という言葉を提示してタイトル奪還を訴えた。

 「昨年、悔しい思いをしていますし、いろんな積み上げがありますけれどもあらためて0からスタートしたい。もう1つはチャレンジャー精神を持ちながら、ただ、チャレンジャーなんですけども強気でやっていきたい」

 そう最強のチャレンジャーについて説明した鬼木監督は、チームとともに6シーズンをかけて積み上げてきた基礎をベースに「自信を持ちながら、ただ謙虚に、しっかり戦って」いきたいとして「追いかける立場でもあり、いろんなものを引っ張っていきたい」と述べた。そしてこれらの思いをひとまとめにして、『最強のチャレンジャー』というワードを使ったのだという。

 そんな今季の川崎フロンターレのチャレンジは意欲的だ。チームからの要請で詳細な説明はまだできないが、組み立て時に最終ラインが変形し、相手のプレスを外して持ち出すというもの。シーズン前の合宿期間中、最初にその練習が行われたのが恩納村での1次合宿中の1月19日の練習だった。攻撃役にプレスをかけさせて引き込み、パスワークでそれを外しながら展開していくという練習で、これが今季のフロンターレのチャレンジの1つ。

 今季のこの取り組みについて、ジェジエウは有効な形になるのではないかと期待を口にする。

 「ビルドアップのところで新しいやり方を少しずつ理解してやってますし、1つのオプションだと自分たちも理解してやっています。DFが少し横に開いてポジションを取るところ。このやり方も含めながら、ビルドアップがよりスムーズになっていけばいいんじゃないかなと。このやり方に自分たちがしっかりとフィットすることができれば、また相手にもやりづらさというのは生まれてくるんじゃないかなと思います」

 昨季、川崎対策として効果を見せていたのが前からのハイプレスで、それらを使いこなしていたC大阪、湘南にリーグ戦2連敗を喫したのは偶然ではない。

 佐々木旭はこの点について「去年も(川崎の)ビルドアップの対策じゃないですけど、前から来るチームが増えてきた」と指摘。その対策として取り入れようとしている練習を「1つのやり方として、たぶん新しいオプションとしてやろうっていうふうになってると思うので。(オプションは)多ければ多いほど良いことだと思う」としている。

ミスを恐れない積極性

 この件を含め、選手たちは挑戦し続けているが、当然チャレンジをすればエラーも出てくる。この点について鬼木監督はチャレンジの末のエラーを受け入れつつ、質にはこだわりたいと語気を強めた。

 「どういう相手にも対応していくというか、超えていけるようにしたい。チャレンジ精神がないとそこはできない。今の時期はエラーもある。ただそのエラーの質はこだわりたい」

 川崎は1月18日に今季初の紅白戦を行ったが、これを受けて取材に応じた脇坂泰斗は、「積極的なプレーが増えて、迷ってる選手が少ない。まず自分の持ってるものを出そうと」するプレーが多かったと振り返る。そして「監督だったりが、チームでやろうとしていることをやろうとしている」とも話す。その結果として出るミスは「意欲的にやることによって起きたミス」であり「消極的なミスより、意欲的なミスの方が、改善点がよりわかりやすく修正しやすい」と述べ、「オニさんが求めていることに応えようといろんな選手がやっている」と手ごたえを口にしていた。

 なお、戦術的な練習は1次合宿に入ってからで、すなわち1月18日の紅白戦までに川崎が消化した戦術的な練習は、5コマということになる。これだけの短期間にチームが同じ方向を向けるのは、鬼木監督の6シーズンの積み重ねの結果であり、新しいチャレンジがあくまでもオプションだということと整合性が取れているとも言える。

イレギュラーとメリット

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江藤 高志

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