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懸念と希望が入り交じる残り2試合。J1残留へ、ガンバ大阪に求められること

2022.10.27

8月中旬の松田浩監督就任以降は守備に重きを置くスタイルで、しぶとく勝ち点を積み重ねてきたガンバ大阪。しかし、32節終了時点でJ2降格圏となる17位と、依然として厳しい状況が続く。残された試合は「2」。ジュビロ磐田、鹿島アントラーズとの対戦を前にチームは現在どのような状態なのか。スポーツ報知の記者としてガンバ大阪を取材する金川誉氏に考察してもらった。

遠藤保仁、パナソニックスタジアム帰還

 これまで9つの主要タイトルを積み上げてきたガンバ大阪が、過去10年で最大の危機に陥っている。わずか2試合を残し、8勝9分け15敗(勝ち点33)で17位。ガンバは試合がなかった今月22日、1試合のみ行われた清水エスパルス対ジュビロ磐田戦が引き分けに終わり、清水が勝ち点1を積んだことで16位から1つ順位を下げ、J2自動降格圏に沈んだ。もはや自力で15位以内の自動残留を勝ち取ることはできないが、10月29日にホームで迎える最下位の磐田戦、11月5日のアウェー・鹿島アントラーズ戦は2連勝が必要だ。

 まずは最下位・磐田との“裏天王山”。ある友人が「ガンバはまだ最下位と試合残しているなんてラッキーや」と話していたが、近年のJリーグファンなら、最下位相手なら勝利が見込める、などという考えは、みるく饅頭・月化粧にはちみつをたっぷりトッピングしたぐらい甘いことはよくご存じだろう。むしろ追い詰められた相手ほど、怖いものはない。それは首位・横浜F・マリノスが、ここ2戦ガンバ、磐田に連敗していることからもよくわかる。

 磐田は引き分け以下で降格が決まる。しかし、ガンバも崖っぷちにいることには変わりはない。磐田に敗れ、残留を争う13位・湘南ベルマーレ(勝ち点35)、14位・京都サンガ(同34)、15位・アビスパ福岡(同34)が勝利すれば、16位以下は確定。さらに16位・清水(同33)も勝利すれば、勝ち点こそ最終節で並ぶ可能性は残るが、得失点差(ガンバ・マイナス13、清水・マイナス8)を考えると、事実上の降格が決まるとも言える。

 あとがない磐田は、勝ち点3を目指して攻撃的なマインドで臨んでくることが予想される。ともに勝利しか許されない状況のため、オープンな試合展開となる可能性もあるが、不気味なデータが待ち受ける。リーグ戦の対磐田は、過去4試合連続で引き分けなのだ。今季、3月12日の第4節で迎えたアウェー戦では1―1。2020年途中までガンバ大阪に在籍したMF遠藤保仁が完全移籍後の初対戦は、こちらも元ガンバのMF大森晃太郎に決められて先手を取られる展開に。後半43分、パワープレーからFWレアンドロ・ペレイラのゴールでなんとか引き分けに持ち込んだ内容だった。磐田がJ2だった20、21年は対戦がないが、19年以前は3試合連続でドロー。ルヴァン杯では19年に2試合を行い1勝1敗だが、リーグ戦では負けていないとはいえ、勝ち切れない試合が続いている。引き分けでは上位陣が勝利すれば、残留への可能性は限りなく小さくなる。

 また2012年にはリーグ最終節で磐田に敗れ、J2降格が決まったという苦い記憶も、当時在籍した選手や、サポーターの脳裏にはこびりついているのではないだろうか。遠藤が移籍後、初めてのパナソニックスタジアム帰還となるこの試合。磐田はボランチ・上原力也が出場停止で、遠藤が9月11日・コンサドーレ札幌戦以来、5試合ぶりに先発する可能性もある。もはや決まり事のように、元ガンバ選手にゴールを決められる近年の傾向を見続けていると、かつてのレジェンドの一刺しで……という恐ろしい結末すらも頭の片隅に浮かんでくる。

ジュビロ磐田移籍後、初のパナソニックスタジアム帰還となる遠藤保仁

最後の切り札

 また最終節に待ち構える鹿島戦は、近年で最大の鬼門だ。公式戦は6連敗中。そのうち4敗は今季で、リーグ、ルヴァン杯、天皇杯で対戦し、すべて敗れている。J1リーグの開幕戦ではFWパトリックが鹿島FW鈴木優磨の挑発に乗って退場し、ホームで1―3と完敗。シーズン途中に岩政大樹監督が就任した鹿島は移行期にあり、現在のチーム状態は決していいとは言えない。しかし6度も負け続けている相手への苦手意識は、簡単にはぬぐえない。パトリックとのいざこざもあり、今季ガンバサポーターの間では抜群の逆人気を誇ったFW鈴木にゴールを奪われ、J2降格が決まるなどという事態は、想像しただけでも身の毛がよだつ。……

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ガンバ大阪

Profile

金川 誉(スポーツ報知)

1981年、兵庫県加古川市出身。大阪教育大サッカー部では関西2部リーグでプレー(主にベンチ)し、2005年に報知新聞大阪入社。野球担当などを経て、2011年からサッカー担当としてガンバ大阪を中心に取材。スクープ重視というスポーツ新聞のスタイルを貫きつつ、少しでもサッカーの魅力を発信できる取材、執筆を目指している。

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