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発展途上のチームが持つ危うさと魅力。京都サンガ、J1残留へ残り2試合のポイント

2022.10.25

13位から17位まで2ポイント差と、大混戦となっている2022シーズンのJ1リーグ残留争い。32節終了時点で14位につけるのが今年J1に昇格した京都サンガだ。残り2節。J1残留にむけて何かがポイントとなるのか。スポーツ報知の記者として京都サンガを取材する金川誉氏に考察してもらった。

「若さ」と「経験不足」

 今季12年ぶりのJ1を戦う京都サンガが、最後の正念場を迎える。ここまでの成績は8勝10分け14敗、勝ち点34での14位。10月29日のセレッソ大阪戦(ホーム)、11月5日のジュビロ磐田戦(アウェー)を残し、降格圏の17位・ガンバ大阪との勝ち点差はわずかに1と、残留争いの真っただ中にいる。直近5試合は、1勝1分け3敗。積み上げた勝ち点4は、残留を争う13位・湘南ベルマーレ以下の6チームでも、2分け3敗(勝ち点2)の清水エスパルスに次いで少ない。最終盤に差し掛かった流れでいえば、非常に厳しい位置にいると言える。

 直近のJ1リーグ・10月8日の川崎フロンターレ戦では、今季のリーグ戦で初めて3点を先行され、1―3で敗北。曺貴裁監督は「もう少し、大人のプレーをしなければいけなかった。見えない(経験などの)差は、やはりフロンターレさんとはある。しかしそこを通って、初めてクリアできる力がつく。その差を認識し、選手たちには次に向かってほしい。差し迫った今、それを言うのもおかしいと思われるかもしれないですけど、現実なので」と話した。今シーズンも残り2試合という状況で、「若さ」「経験不足」と言った要素が表面に浮かび始めた、とも言える。

 川崎戦ではキックオフ直後は、昨季王者に対してショートカウンターでチャンスを作り出すなど互角に戦ったが、セットプレーから同じような形で2失点。スタメンを見ると、DF麻田将吾、井上黎生人の両センターバック、中盤にはMF川﨑颯太、福岡慎平、武田将平と、チームの中核を担うセンターラインには『J1経験1年生』がずらりと並ぶ。曺監督は「どんなに悪くても(前半は)1失点に抑えて、後半に川崎さんの足が止まってきたところで得点を取り返したかった。ゲームの中の“きわ”の経験を、まだ選手たちに伝え切れていないな、という自責の念のようなものもあります」と悔やんだ。1―1と引き分けた10月8日の名古屋戦でも、セットプレーからの失点で勝ち点3を逃しており、勝負どころのポイントをかぎ分ける力の不足をここにきて露呈した形だ。

 今季は開幕戦で浦和レッズに1―0で勝利するなど、久々となるJ1の舞台で好スタートを切った。最終ラインを高く保ってコンパクトフィールドを作り出し、ボールを奪えば一気に前線になだれ込んで前に人数をかける曺貴裁監督のスタイルを、J1経験の浅い選手たちが堂々と体現した。相手ゴールに迫れば、最後は抜群の決定力を誇るエースFWピーター・ウタカが仕留めた。第9節の柏レイソル戦(4月17日)に勝利した時点では、今季最高の5位にまで浮上。しかし開幕から10試合で7ゴールを奪ったウタカの勢いに陰りが見え始めると、チームの順位もじわじわと後退していった。7月には新型コロナのクラスター発生などもあり、勝ち点を伸ばせない時期が続いた。それでもスタイルがぶれることはなく、1度もリーグ戦3連敗がないままシーズンのラスト2試合を迎えている。

荒木大吾のコンバート

 残留を争う6チームの中で、今季監督交代を行っていないのはアビスパ福岡とサンガのみ。積み上げてきたスタイルのまま、シーズンの佳境に挑めるという点においては、大きなアドバンテージにも映る。一方で最大の不安要素は、最終節に待つジュビロ磐田との相性の悪さだ。曺監督の就任1年目となった昨季は、J2で相まみえて2戦2敗。2位でJ1昇格こそ果たしたものの、J2優勝はライバルにさらわれた。今季もホームで迎えた第3節での対戦では、磐田FW大津祐樹のスーパーゴールで先制されると、前半39分にGK上福元直人の退場もあって1―4と大敗。ここ2年で3連敗中と、苦手意識は否定できない。一方で次節のセレッソ大阪は、今季アウエーでの対戦で1―1と引き分け。セレッソは10月22日に行われたルヴァン杯決勝、アディショナルタイムの2失点で広島に痛恨の逆転負けを喫しており、間違いなくそのショックはあるはず。ライバルたちの結果にもよるが、サンガの理想としては苦手のジュビロを待たず、セレッソ戦で勝ち点3を奪って残留を確かなものにしたいところだ。……

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京都サンガ

Profile

金川 誉(スポーツ報知)

1981年、兵庫県加古川市出身。大阪教育大サッカー部では関西2部リーグでプレー(主にベンチ)し、2005年に報知新聞大阪入社。野球担当などを経て、2011年からサッカー担当としてガンバ大阪を中心に取材。スクープ重視というスポーツ新聞のスタイルを貫きつつ、少しでもサッカーの魅力を発信できる取材、執筆を目指している。

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