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J2残留の先にあるクラブの未来。大宮アルディージャの今とこれから

2022.10.08

2017年に降格してから、今季で5シーズン目のJ2を戦っている大宮アルディージャ。年々順位は下降線を辿り、ここ数年は残留争いを強いられてきた。迎えた2022年シーズンはJ1昇格を掲げながら、思うような結果は手繰り寄せられず、指揮官も霜田正浩監督から相馬直樹監督に交代。現在はJ3降格回避が最大の目標という状況に直面している。そんなこのクラブの過去と今を知る男、アルディージャに密着し続けてきた土地将靖が厳しい目線を向けつつ、未来への光を展望する。

強いられた残留争い。J2での苦闘が続くアルディージャの現状

 いつまで同じことを繰り返すのだろうか。しかも、カテゴリーは1つ下がってしまっているというのに――。

 J2も第39節までを終了。優勝やJ1昇格争いと同様、残留争いも佳境に入っている。この時点で数字上J3降格の可能性があるのは、ヴァンフォーレ甲府、ザスパクサツ群馬、いわてグルージャ盛岡、FC琉球、そして大宮アルディージャの5チーム。J1にいた2005年から2014年、常に残留争いに関わり、ラインコントローラーなどと言われ続けていた大宮だが、2017年の2度目のJ2降格以降も変わらない。

 2018年、2019年シーズンこそJ1昇格プレーオフ出場圏まで食い込んだが、2020年に15位に沈むと、2021年は16位、そして今年も残留争いの渦中にある。昨年は4チーム降格の変則レギュレーションの中、最終節にギリギリでの残留を果たしたが、それでも今シーズンは大胆にもJ1昇格、J2で6位以内を目標に掲げた。しかし、状況は全く変わっていない。いや、より悪化したとも言えるかもしれない。

 10月5日には、新型コロナウイルスによる影響で順延となっていたモンテディオ山形戦が行われた。山形に先制を許し、さらに何度となく決定機を作られながら渾身の守備でしのぎ、試合終了間際の同点劇でスタジアムは歓喜に沸いた。だが、得られた勝点は1。前節で直接対決に敗れたザスパクサツ群馬に勝点で並び、得失点差で上回ったことで順位こそ19位となったが、降格圏の21位・いわてグルージャ盛岡とは、まだ5ポイント差である。

 逆転可能な勝点差は残り試合数と同じ、とは良く言われる話ではある。であれば、残り3試合で5ポイント差は安全圏か。だが、岩手の2連勝、大宮の2連敗で入れ替わる差でもある。相馬直樹監督就任以降、2連敗は3度あり(その内、1度は3連敗)、あながちあり得ない話でもない。相馬スタイルの戦い方は徐々に構築されてきている印象はあるが、1試合当たりの勝点も1.05と、霜田正浩前監督(0.94/18試合)に比べ劇的に向上したわけでもない。残留争いは、まだまだ予断を許さない状況である。

 2012、2013年シーズンに掛けては、21試合連続負けなし(13勝8分け)というJ1記録を打ち立てたこともあった(その後、川崎フロンターレが30試合で更新)。また、2度目のJ1昇格となった2016年には、クラブ史上でJ1最高位となる5位に入り、あと少しでアジアチャンピオンズリーグ出場圏獲得にまで至る可能性もあった。しかし、続かない。連続負けなし記録を打ち立てた翌2014年には初のJ2降格。5位に入った翌2017年も2度目のJ2降格となっている。

 特に2018年からはJ2暮らしが続き、ここ3シーズンはJ1昇格レースにも絡めない有り様である。いったい何がどうなってしまったのだろうか。

代わる監督と強化責任者。見えてこないクラブの核

 トップチームの強化において、クラブに核となるものがないということを痛切に感じる。特に2017年の2度目のJ2降格以降は、対症療法の繰り返しで積み上げが何も感じられない。

 2017年、前年の好成績から一転しての低迷を受けて、当時の強化部は渋谷洋樹監督(現ジュビロ磐田監督)の解任を決断する。トップチームコーチだった伊藤彰氏(現ベガルタ仙台監督)を後任に据えたが、そこからシーズン終了を待たずに、今度はクラブトップが強化責任者である松本大樹氏(現群馬強化本部長)ごと解任という強硬策に出た。

 後を受けたのは、2015年にスカウトとして編成業務に携わり始めたばかりの西脇徹也氏(現日本サッカー協会地域ユースダイレクター)。2018年は石井正忠氏(現ブリーラム・ユナイテッド監督/タイ)、2019年には高木琢也氏を監督として招聘し、J1を目指したが叶わず、岩瀬健氏(現大分トリニータヘッドコーチ)を招いた2021年に成績不振の責を負い、西脇氏と岩瀬氏はまとめて解任されてしまった。

……

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大宮アルディージャ文化経営

Profile

土地 将靖

1967年埼玉県生まれ。1993年のJリーグ開幕と同時に試合速報サービスのレポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーに転身し大宮アルディージャに密着、各種媒体への寄稿を細々と続けている。2005年より続いていた大宮全公式戦の現地直接取材はコロナ禍で途絶えたが、近年は下部組織の取材にも注力し、精力的に活動している。

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