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エクアドルの前に空転するプレッシング…その時、日本はどう対応した?

2022.09.29

カタールW杯の最終メンバー選考前最後の試合となったエクアドル代表戦に0-0で引き分けた日本代表。2-0で勝利した前回アメリカ代表戦で採用した[4-2-3-1]を継続する反面、スターティングメンバーは総入れ替えして臨んだ一戦ではどのような収穫と課題があったのか。らいかーると氏が分析する。

 アメリカに快勝した日本。エクアドル戦を迎えるにあたって、森保一監督の決断はスタメンの全員入れ替えだった。親善試合であることを考慮すれば、理解のできる決断と言えるだろう。一方で、W杯直前の貴重な機会にスタメン組の成熟と拡張よりもベンチ組の出場機会を優先するべきなのか?という声が挙がっても不思議ではない。

 森保監督の頭の中を想像してみると、アジア予選で得た[4-3-3]とは仕組みの異なる[4-2-3-1]をアメリカ戦で採用したこともあって、新しい方法論において全員がどうなるかを、 実際の試合で見たかったのかもしれない。または、26人を選ぶことができ、交代枠も5枚に増えた本大会の新しいルールの中で、過去のW杯の反省や東京オリンピックでスタメンを固定したデメリットへの対策としてスタメンのターンオーバーした可能性もある。新しい[4-2-3-1]の仕組みで考えると、アメリカ戦がA、エクアドル戦がBと考えるべきなのだろう。

はまらないプレッシング

 エクアドルが個々の強さとチームとしての決まりごとを遂行する意思を見せた序盤戦となった。試合開始早々に訪れることが多い様子見のロングボールによる攻防を選択しなかったエクアドルは、ジェヘクソン・メンデスをCBの間に移動させ3バックでビルドアップする可変式を早々に披露する道を選んだ。

 アメリカ戦でも迷いが見られたように、日本は3バックへのプレッシングを得意としていない。アメリカは3バック+2セントラルハーフだったのに対して、エクアドルは3バック+アンカーの配置だった。序盤の日本は2トップの選手は3バックを担当し、アンカーにはセントラルハーフのどちらかが対応するようになっていた。しかし、セントラルハーフが前に出ていくことで、サイドハーフは中央にポジションを絞らなければいけない。そうなると、相手のサイドにスペースができる仕組みに繋がり、三笘薫が守備に奔走する場面が目立つようになっていった。三笘と長友佑都サイドが狙われたというよりは、エクアドルのストロングサイドと噛み合った結果の三笘、長友のプレー機会の多さに繋がった可能性が高い。

 プレッシングがはまらなければ、日本が狙っているボールを奪ってのカウンターの機会を作ることはできない。また、エクアドルが[4-4-1-1]で引いて構えたこともあって、日本はボールを保持することを許されていた。ボールを奪ってのカウンター機会があまりないようであるならば、ボールを保持する時間を増やして試合を進める方が良い。アメリカ戦とは異なり、日本は速攻とショートパスによる前進をごちゃまぜに行いながら試合を展開していくこととなった。

 [4-3-3]に比べてビルドアップ隊が少なくなっている日本は、柴崎岳と田中碧の立ち位置とボール循環で相手のプレッシングをずらしていく場面が目立った。特に、柴崎の繰り返されるバックパスで相手にプレッシングのスイッチを入れさせる。そのスイッチを利用して日本のCBが相手を引きつけてパスをする場面が何度も見られた。明確なビルドアップの出口がなければ、ボールを動かして相手を動かし、時間とスペースを得ることができるのはこのコンビならではの芸当だろう。

 その一方で、速攻をチームのコンセプトとしているだろう今回の欧州遠征では、CBやセントラルハーフからの速攻にも意識して取り組んでいた。速攻で大切なことは、セカンドボール争い隊を準備することにある。この試合、日本のボール保持からの前進を見ていると、チームで速攻とショートパスによる前進のどちらをどのタイミングで実行するかが共有されていないようだった。ボールを奪えない試合展開から田中と柴崎コンビは試合のテンポを落としたいように見えたが、 他の選手はチームの約束事に引っ張られる場面が多かった。そして、この迷いによる犠牲者は前線で孤立した古橋亨梧と、ビルドアップの出口となるか、セカンドボール争いをやるべきか迷いに迷った南野拓実だろう。

ミカエル・エストラーダを追う柴崎(7)と田中(17)。ともにゲームコントロールを担い相手のプレスをいなすプレーを見せたが、前に出ていく局面で周囲と呼吸が合わない場面が見られた

 10分が過ぎると、柴崎、田中の立ち位置に合わせて南野が中盤に参加するようになる。[4-3-3]のような雰囲気が出るように変化していった。ただし、基本的に南野の立ち位置は中央となっており、[4-3-3]で5レーンに誰が立つかが整理されていた状態から[4-2-3-1]に変化することで、立ち位置のバランスはより阿吽(あうん)の呼吸感に託されていることは否めない状況となっている。この状況は、鎌田大地たちが登場した後半もさほど変わらなかった。

 スプリンクラーの主張がやんだ15分以降から、日本はボールを動かしてから縦に仕掛けるように変化。相手陣地には入れるようになってきたので、ボールを奪われてからボールを奪い返してカウンターを仕掛ける、もしくは自分たちのボール保持を延々と続けることを行いたいところだが、エクアドルの個々の強さによってトランジションで優位に立てない状況が続いた。速攻で相手にボールを渡してからのプレッシングも、日本が最終的にボールを奪い返せる位置は自陣深くであることが多く、プレッシングがはまらない、はまってもボールを奪い返せない試合でどのように振る舞うかが試される試合となっていった。

はまらないなら、ボール保持でプレッシング機会を減らす

……

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エクアドル代表カタールW杯日本代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ち。サッカー指導者にもかかわらず、様々な媒体で記事を寄稿するようになってしまった。ただ、書くことは非常に勉強になるので、他の指導者も参加してくれないかなと心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』