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アメリカに勝利した日本が前半と後半に見せた「試合の中での修正」とは?

2022.09.25

カタールW杯に向けて重要なテストの機会となるアメリカ代表との親善試合に挑み2-0で勝利した日本代表。メンバーやシステムに変化のあったこの1戦のパフォーマンスについて、らいかーると氏が分析する。

 アジア最終予選に臨んだメンバーを中心に構成された試合は、日本で開催されたチュジニア戦以来となった。[4-3-3]の台頭によってボール保持を手に入れた日本代表だったが、6月の4連戦によって、アンカーを固定すると遠藤航がボール保持、非保持を問わずに狙われてしまうこと、相手のボール保持に対してウイングを前に残したい[4-3-3]からウイングを下げてインサイドハーフを前に出す[4-4-2]に変化してのプレッシングは選択肢として必要であることを叩きつけられた。

 そんな課題たちを踏まえて、本大会のテストマッチが欧州で行われる。ただし、欧州のチームたちはネーションズリーグで大忙しだ。よって、相手はアメリカとエクアドル。ドイツやスペインを仮想とする相手が世界にどれだけ存在するのか?と考えると、やるせない気持ちになることもまた事実であった。

下りる相手選手への対応

 このアメリカ戦、日本は[4-2-3-1]で臨んだ。絶対的な存在であった田中碧と南野拓実が外れ、鎌田大地をトップ下、久保建英を左サイドで起用する形となった。所属するクラブでのパフォーマンスが優先されたと言われれば、万人が納得する采配だろう。ただし、チームでのパフォーマンスを森保監督が重視してきた過去をあまり覚えていないので、別の理由での抜擢かもしれない。

 [4-3-3]よりも[4-2-3-1]を選択した理由は、[4-4-2]でのプレッシング、そしてカウンターを重視したからだろう。チュジニア戦も相手の[3-2-5]に[4-4-2]をぶつける采配を行っていることを考えると、論理的な流れと言っても差し支えない状況である。

 試合を通して見られた展開は、早々に姿を表すこととなった。吉田麻也がラフなロングボールを連続で披露したように、序盤はお互いの無秩序状態の様子見で試合が展開していくことが多い。しかし、アメリカのテーマがショートパスによる前進だったこともあって、試合はアメリカのボール保持に対して、日本のプレッシングがどのように機能するか?という構図となった。

 アメリカの配置は[4-3-3]。アメリカのアンカーを、どのように消すかが日本の鍵となった。2トップに配置された鎌田大地と前田大然が交互にCBとアンカーを見る役割を実行することで解決する狙いが読み取れた。2トップがアンカーを消してくれることによって、2列目の選手たちが目の前の相手に集中できる状況を作ることを目指している。いざとなれば、2トップが相手の2CBに出ていくこともたやすいので、[4-4-2]の方がプレッシングの枚数の調整は行いやすいと選手が実感している可能性は高い。

 ボール保持者の近くの選手が捕まっているアメリカは、前線の3トップにボールを当てて後方サポートをすぐに行う形を志向していた。相手を背負うウイングと下りてくるトップの選手がワンタッチで味方にボールを預けるサポートは、マンマークが流行している世界においてこれもまた流行の兆しを見せているプレーである。

 さらに、守田英正に捕まっていたルカ・デ・ラ・トーレは自分の立ち位置を下げることで、ボール周辺のサポートの意識を強めながら守田の振る舞いを観察しているようだった。守田が釣り出すことができれば、前線の選手を空いたエリアに下ろす手筈になっている。マンマーク対策としては定跡の動きで、日本のプレッシングを牽制する立ち位置の移動だった。

 6分に訪れたアメリカの決定機は、日本のMFとDFのライン間を綺麗に使われた場面から始まっている。チュニジア戦の日本の[4-4-2]は人よりもエリアを守る意識が強かったが、この試合の日本は人への意識増し増しであった。となると、人と人の間にボールを通されることが増えてしまう。そんな状況を象徴する場面だった。

 また、鎌田はFWとしての役割を担っているようだった。よって、日本がボールを保持している時に、インサイドハーフのように振る舞うことはあまりなかった。これが日本のボール保持を落ち着かせる選手の不在に繋がったこともあって、日本のボール保持は少し危なっかしい場面が多く見られる。時間とスペースを紡いでいくことができず、個々の選手がそれぞれどうにかしないといけない状態であった。なお、鎌田がヘルプに入ると、状態が一変したこともまた事実であった。

 9分頃からデ・ラ・トーレの下りる動きに対して、日本は全体を押し上げて対応するようになる。試合中の修正が肝だとすると、悪くない立ち上がりと言えるかもしれない。10分が過ぎると、アメリカは自陣に撤退して構えるように変化。日本のCBの片方がボールを持つことを許してくれることもあって、日本は冨安健洋から鎌田をビルドアップの出口として、久保のカットインからの右足シュートに繋げることに成功する。……

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日本代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ち。サッカー指導者にもかかわらず、様々な媒体で記事を寄稿するようになってしまった。ただ、書くことは非常に勉強になるので、他の指導者も参加してくれないかなと心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』