
クリスマス明けからプレミアリーグ5戦3勝2分で12位まで浮上したクリスタルパレスで、昨夏加入の背番号18が評価を高めている。1月18日の第22節では今季リーグ戦3度目の先発フル出場を果たし、ボランチとして攻守で勝利に貢献。適応に苦しんだ前半戦を経て、ここから「もっと成長できる」と手ごたえを口にする28歳の現在地を、そのウェストハム戦後の談話を中心にレポートする。
「ある程度繋いでボールを保持できないと、自分の良さはなかなか出ない」
サッカーの世界では、よく「2週間という時間は十分に長い」と言われる。その間に数試合が行われることもあり、チームの順位、選手の調子、監督の去就などにも変化が起こり得るからだ。
そして、この表現はクリスタルパレスの鎌田大地にも当てはまる。昨夏にラツィオから移籍した新MFは、今年1月4日のプレミアリーグ第20節でチェルシーと引き分けた後(1-1)、次のように言っていた。
「自分のキャリアでは、ポゼッションできないチームでやってきていなくて、今それが、ポゼッションできずにロングボールがすごく多いチームになって。今までボランチをしていたチームでは、ポゼッションできて、うまく前の選手と入れ替わりながらボックスに入って点が取れたりだとかっていうのを、ある程度想像しながらやっていたんですけど、かなり難しいものになっている」
15位に落ちていたパレスが、トップ4争いに顔を出している敵に追いついた一戦。それでも、「今こういうサッカーをしているのはすごく仕方ないことだと思う」と、自分に言い聞かせるように言っていた。
しかし、ホームでのFAカップ3回戦(1-0)とアウェイでのプレミア第21節(0-2)で、それぞれストックポート(3部)とレスターを下した後の18日、敵地での第22節ウェストハム戦勝利後(0-2)には、こう話し始めた。
「チームとして、久しぶりにボールを繋ぐっていうことをトライできた試合。後半、少しうまくいかなくなった部分もありましたけど、トライできて勝てたっていうのはチームとしてすごく大事なことだと思う」
ウェストハムは、低調で前週に監督交代を見たばかりの相手だった。立ち上がりはパレスがボールを支配し、鎌田自身にもボールと味方を前に動かそうとするプレーが目立ったが、最終的なポゼッションでは敵が上回った一戦での前向きな発言だった。
対戦相手の違いはあるが、それ以上に、自軍の置かれた状況が変わっていた。リーグ戦での連続無敗を5試合に伸ばし、今季初の2連勝も記録して、降格圏からの距離を11ポイントに広げることになったのだ。
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Profile
山中 忍
1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。