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横浜F・マリノスを支える絶対的な大黒柱。岩田智輝から湧き出す飽くなき成長欲

2022.09.16

3シーズンぶりのJ1リーグ制覇に向けて、開幕直後からアクセルを踏み続けてきた横浜F・マリノス。そのチームでケヴィン・マスカット監督の信頼も厚く、最も長いリーグ戦でのプレー時間を誇っているのが岩田智輝だ。A代表にも選出されるなど、充実の時を過ごしている彼は、継続的な「体づくり」へ取り組むことで、成長への階段を駆け上がってきた。今回は本人の証言をもとに、気鋭のサッカー大好き記者・小口瑞乃(スポーツ報知)が岩田の今を探る。

“キン肉マン”活躍の秘訣は「よく寝ること」

 横浜F・マリノスのゴール裏から、“キン肉マン”の原曲を元にしたチャントが響いた。「バモバモ 岩田智輝 勝利に向かって」。力強いボール奪取で攻撃の起点となり、対人の強さを生かした守備でも抜群の安定感を見せ、リーグ首位を走るチームを支える。

 ボランチやCBをこなしながら26試合に出場(9月14日時点)し、フィールド登録選手の中で最も長い2175分のプレー時間を誇るのは、F・マリノス加入2年目の岩田智輝。連戦を考慮してメンバーを入れ替えながら毎試合挑む中、継続的にピッチに立ち続ける。スポットライトを浴びることの多い攻撃陣のような派手さはないかもしれないが、チームになくてはならない絶対的な存在。ケヴィン・マスカット監督からも厚い信頼を置かれるプレーヤーだ。

 「連戦でも使ってもらっているのは『頼りにしてくれてるな』と感じるし、だからこそ試合に出るからには責任を持ってチームを勝たせないといけない。毎試合勝利のために、チームのためにということは考えていますし、チームのためにやることが自分のいいプレーにもつながる。責任感はすごく強くなったし、信頼には応えたいといつも思っています」

ランニングで先頭を走る岩田(Photo: Mizuno Oguchi)

 マスカット監督がよく口にするのは「いかにリフレッシュできているコンディションの良い選手をピッチに送るか」ということ。過密日程でもリカバリーへの高い意識を持ち、常にベストを尽くせるコンディションに整えている。強度の高いサッカーをするF・マリノスでタフに走り続けるパワーはどこから湧き出てくるのか――。

 「大事なのはとにかくよく寝ることです。1日9時間くらいは寝たいですね。子ども(1歳)と一緒に寝てしまうことがほとんどなので、夜9時半にはベッドに向かっているし、10時には眠気スイッチが入ってます(笑)。あとは食事。奥さんもいろいろ考えてくれているし、自分が肉か魚を食べたいと言ったらそれにできるだけ合わせていろんなものを作ってくれるので、やっぱり良い食事と良い睡眠が大事なのかなと。基本的なことですけど、一番のリカバリーです。奥さんは今ちょうど里帰りしているんですけど、ありがたみを感じています(笑)」

アダイウトンに突き付けられた「体づくり」の必要性

 F・マリノス加入後は大きなケガをしたことはないが、「ケガをしない体作り」への意識が生まれたのは、大分トリニータで過ごした若い頃の経験からだった。

 「それこそプロになる前や大分では捻挫をしょっちゅうしていて、2、3カ月休むこともあった。大分に在籍していた時もグロインペイン症候群という股関節のケガをして、3カ月くらい休んでしまったことがありました。だからこそすごく意識は変わったと思います。やっぱり試合に出ることで選手としての価値は上がっていきますし、試合に出られないとそもそも証明することができない。チャンスがゼロになってしまう。『ケガをしない体作り』は本当に大事だと思っています」

 今シーズンも4月中旬に2週間程度の離脱があったが、「こんなに連戦が続く中で長くプレーできているのは珍しいというか、久しぶり」と意識が変わってからは、ケガの頻度が明らかに減った。さらに「ケガをしない体作り」をするために大切にしているのは、筋力トレーニング。“キン肉マン”のチャントができるほど、筋骨隆々とした体つきは自他ともに認める大きな特徴の一つだ。

 「筋トレに力を入れ始めたのは、高校1年生でユースに上がって、寮に入ってからです。その時の3年生がみんなすごくマッチョで、始めはその先輩たちに憧れてめちゃくちゃ鍛えていましたね。見習って、内容も全部マネして(笑)。高校生の時はつけばいいと思っていたので、ベンチプレスとか高2で105キロ上げたり……。相当やっていました」

 “憧れ”からスタートした筋トレだったが、徐々に体を鍛える重要性を感じ、考えてトレーニングをするように。16年に大分でトップ昇格を果たし、J3からJ2、J1とカテゴリーを上げていく中でも、その気持ちは強まった。……

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岩田智輝横浜F・マリノス

Profile

小口 瑞乃(スポーツ報知)

中学・高校は陸上部で400mハードル専門。同好会でマネージャーを務めた大学卒業後の20年報知新聞社入社。サッカー担当として横浜F・マリノス、年代別代表、なでしこジャパンなどを取材。親の影響で幼い頃からサッカー観戦が日常にあり、好きなポジションはボランチとCB。リフティング最高回数は9回だが運動量には自信あり。

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