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ラグビーだけではなく、サッカーでも東大阪を盛り上げる――FC大阪社長・近藤祐輔インタビュー

2022.08.02

日本フットボールリーグ(JFL)で「大阪第3のJリーグクラブ」を目指すFC大阪が、悲願のJ3昇格へ順調な歩みを進めている。6月19日の鈴鹿ポイントゲッターズ戦では、ラグビーの聖地・花園ラグビー場(東大阪市)のメーングラウンドで23年ぶりにサッカーの公式戦を開催。同リーグ史上4番目となる1万2152人が来場した。異例の盛り上がりを見せた背景、現実味を帯びてきたJリーグ参入への思いを近藤祐輔社長に聞いた。

動員数はお金には換えられない

 FC大阪が優勢に進めながら1点が遠かった試合は、互いに無得点で迎えた後半44分、主将のDF坂本修佑の豪快なミドルシュートが決勝点となった。劇的な幕切れに、近藤社長は「勝って良かった、というのが1番ですね。あの試合は勝ってなかったら色んなものがガラッと変わっていたと思う。あの人数のお客さんがいたから勝てた」と激闘を思い出しながら胸をなで下ろした。

決勝ゴールを決めた主将の坂本修佑

 クラブは1996年に創設。大阪府リーグ、関西リーグを昇格し2015年からJFLに参戦した。20年にはJリーグ百年構想クラブに承認され、昨年J3クラブライセンスを取得している。これまでは服部緑地陸上競技場(豊中市)、花園ラグビー場第2グラウンドをホームスタジアムとしていたが、メーンである第1グラウンドでの公式戦実施は「せっかく良い場所があるわけですから。そこでできればとは思っていた」と、以前から構想にあったものだった。

 開催に向け、J2横浜FCから鈴鹿に期限付き移籍で加入した元日本代表FW三浦知良の存在も話題を集めた。しかし、近藤社長は「集客に関しては、第1グラウンドで23年ぶりに試合をするということが1番のトリガーになったのは間違いない。このインパクトを自分たちで活用して集客につなげたというのが大きかった。カズさんが来る、来ないというのは今回の人数にはほぼ関係無かったと思います」と強調した。

 実際、試合前から周囲の反響は上々だったという。「街を歩いていても『今度(鈴鹿戦に)行くよ』と声をかけられることもあった」と同社長。今回の集客に関しては、約6割を無料で招待したというが「今は我々チームのことを知っていただく時期。一度見に来てもらえれば可能性も広がる。動員数はお金には換えられないので」と先を見据えた判断も功を奏したといえる。

 現場スタッフの努力が実り、約1万2000人の来場は大きな盛り上がりにつながったが、同時に課題も見えた一戦でもあった。「ポジティブなこととネガティブなこと、色んなことを感じた試合だった。(ラグビー場がある)花園中央公園自体がああいう大きなイベントをすることに慣れていない会場だな、とは思いましたね。飲食にしても、あの日は想像以上に暑くて飲み物が十分に行き届いていなかった。試合に勝ったから良かったものの、そういう所はもっとちゃんとしたかった」。今後に向けた貴重なテストケースとなったようだった。

 カズは5月中旬の試合で右太ももを負傷した影響で、この日もベンチ外。ラグビーの聖地でのプレーは実現しなかったが、試合前のイベントに登場したりファンサービスに応じるなど、精力的に対応し観衆を大いに喜ばせた。2月に55歳を迎えた今年からJFLに戦いの場を移したレジェンドは、Jにも引けを取らない集客に「チームの規模を考えれば素晴らしい数。こういった雰囲気を作ってくれたことに感謝したいと思います。1人でも多くの方に応援してもらえるように、しっかりとしたビジョンを持って続けていくことが大事だと思う」と賛辞を送った。

花園ラグビー場で開催された 鈴鹿ポイントゲッターズ戦は1万2152人が来場した

東大阪のポテンシャルは高い

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FC大阪

Profile

種村亮

1983年生まれ、三重県出身。暁高校、関西大学を経て2007年に報知新聞社入社。サッカー、紙面レイアウト、芸能、アマチュア野球、プロ野球(広島カープ)を担当した後、2019年にサッカー担当に復帰。Jリーグはヴィッセル神戸、セレッソ大阪を担当。Twitter:@hochi_tanemura

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