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戸田和幸がSHIBUYA CITY FCで伝えたいこと――テクニカルダイレクター兼コーチ就任の背景

2022.06.08

2022年1月25日、SHIBUYA CITY FCが発表した戸田和幸氏のテクニカルダイレクター兼コーチ就任のリリースはサッカーファンに大きな驚きとともに受け止められた。現役引退後は人気解説者としての地位を確立し、今後のキャリアに注目が集まっていた中で、戸田氏はなぜ東京都リーグ1部のクラブを選択したのか。宇都宮徹壱氏が本人を直撃した。

大学の監督から都1部クラブのTD兼コーチとなった理由

 リバプールとレアル・マドリードによるCL決勝の解説を2日後に控えた5月27日、渋谷区スポーツセンターに戸田和幸の姿があった。

 渋谷区内から茨城県つくば市に移転した、東京教育大学体育学部の跡地に作られた区民のための施設には、野球兼用の人工芝グラウンドがある。平日の午前、ここを利用しているのが、東京都リーグ1部に所属しているSHIBUYA CITY FC(以下、渋谷シティ)。戸田は今季から、TD(テクニカルダイレクター)兼コーチとして指導している。

 渋谷シティの監督は、名古屋グランパスなどでプレーした阿部翔平である。ただし選手兼任ということもあり、クラブ代表の小泉翔が共通の友人である金古聖司を通じてオファーしたところ、戸田はこれを快諾。監督ではなくTD兼コーチという役職について、当人はどのように感じているのだろうか。

  「すでに監督は決まっていて、しかも選手兼任じゃないですか。自分のパフォーマンスに集中しながら、俯瞰した視線でゲームを確認するのは不可能ですよ。(都リーグ)3部とかだったらできるかもしれないけど、1部で結果を求められるとなったら、やっぱり厳しい。これまでずっと大学生に指導してきて、自分自身も競技レベルを上げたところでチャレンジしたいという思いもありました。そういう意味で(TD兼コーチのオファーは)いいタイミングだったと思います」

 最近では「解説といえば戸田和幸」というのが、多くのサッカーファンの共通した認識であろう。しかしその地位に安住することなく、指導者としてのキャリアも地道に積み上げている。もっとも、彼が率いたチームは、かなりユニークだ。去年までは一橋大学ア式蹴球部、その前は慶應義塾体育会ソッカー部のCチーム。44歳という年齢を考えても、そろそろJのトップチームを率いてもおかしくないと思えるのだが。

  「実際、何度かJクラブからお話もいただいていたんです。けれども、自分の中でプランがあって『今は勝負する時ではない』と考えたり、指導者として自分をしっかり確立していく必要もあるなと思ったりしていました。逆にプロにこだわる必要も感じなかったし、多少レベルが高くなくても物事にしっかり向き合うマインドがあれば、アマチュアの学生でも問題ないと考えました」

大学生を指導して学んだのは『教えすぎてはいけない』こと

 ではなぜ、大学から社会人の指導者に転身したのだろうか? 慶應と一橋、そして渋谷シティ。これら3つのチームには、どんな共通点があるのだろうか? 戸田の答えは「伸びしろがあること」であった。……

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SHIBUYA CITY FC戸田和幸

Profile

宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。2010年『フットボールの犬』(東邦出版)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、2017年『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)でサッカー本大賞を受賞。16年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(https://www.targma.jp/tetsumaga/)を配信中。

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