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アーロン・ラムズデイル(イングランド):「フットボールがすべてじゃない」。GKのイメージを一新する笑顔の熱血漢【W杯注目の新星④】

2022.07.27

7月11日に発売され、現在プレゼントキャンペーンも実施中の『footballista 2022 QATAR WORLD CUP GUIDEBOOK』。出場32カ国確定のタイミングでどこよりも早く、全チームの有力メンバーを網羅した選手名鑑と戦術分析をお届けするカタールW杯観戦ガイドだ。その連動企画として、WEBでは各国の担当ライターがそれぞれ、本大会でブレイク期待の“ライジングスター”を紹介。第4回はロシアW杯4強、EURO2020準優勝の「イングランド代表」から、何が起きても笑顔を絶やさない“変わり者”、昨年11月にデビューした24歳のGKラムズデイル(アーセナル)を取り上げる。

 24歳のアーセナルの守護神は、GKというフットボール界の“異色なポジション”のイメージを一新する選手かもしれない。

 唯一、ピッチ上で手を使うことが許された職業、それがGKだ。そのポジションはチームに一つしかなく、試合に出られるのは一人だけ。守備の最後の砦として失敗が許されず、一つのミスで定位置を失うこともある。そして一度レギュラーの座を奪われたら、再びチャンスが訪れるまでキャリアの大半をベンチで過ごす可能性だってある。GKとは、そんな報われないポジションだ。だから、その道を選んだ選手は「変わり者」だと言われる。孤独、神経質、過敏、短気というイメージを持たれやすい。

 アーロン・ラムズデイルも、子供の頃に「キーパーになりたい」と夢を語った時は「気が狂っているのか?」と父親に言われたという。だが、今の彼を見ていると、これまでのGKに対する固定観念が薄れてくる。ピンチを防げばガッツポーズし、味方のゴールを誰よりも喜ぶ。時には敵サポーターを挑発し、勝利すれば味方のファンと歓喜する。彼はGKとして、これまで――少なくともイングランドでは――見たことがないほどの“陽キャラ”なのだ。

1998年5月14日生まれの24歳。シェフィールド・ユナイテッドの下部組織から2016年11月に18歳でトップデビューを果たし、翌年1月にはボーンマスに移籍。19-20はボーンマス、20-21は復帰したシェフィールドUの正GKとしてプレミアリーグで飛躍を遂げ、昨夏アーセナルに加入した。イングランド代表では追加招集メンバーとしてEURO2020を経験後(出場はなし)、昨年11月のW杯予選で初出場。今年6月のUEFAネーションズリーグでも2試合に先発している

「人生はフットボール以外のことの方が難しい」

 「若いだけ」と思うかもしれない。「まだプロ選手としての真の怖さを知らないから楽しめている」と考える人もいるだろう。確かに彼は若い。しかし、彼は24歳という年齢ですでに様々なことを経験しているのだ。そのキャリアは決して常に順風満帆だったわけではない。初めて所属したプロクラブの下部組織では、体が小さいことを理由に放出された。プロ選手になってからも2シーズン連続でプレミアリーグから降格する失意を味わった。それでも彼は笑顔でピッチに立つ。なぜなら「フットボールがすべてじゃない」からだ。

 アーセナルに加入した際のインタビューで、子供の頃の自分にどんなアドバイスを送るかと聞かれたラムズデイルはこう答えている。

 「笑顔だよ。これから何が起こるかわからないので自由な気持ちで楽しむべきだ。他の人の感情や意見はコントロールできない。唯一、自分でコントロールできるのは、自分のプレー。そして楽しむことだ。何が起きても笑顔を絶やすな。なぜなら、人生はフットボール以外のことの方が難しい。フットボールがすべてじゃないからね」

 その言葉通り、彼はフットボールを存分に楽しんでいる。そして、その笑顔でチームに絶大な影響を与えている。昨シーズン、25年ぶりに欧州カップ戦の出場権を逃したアーセナルは、プレミアリーグ開幕3連敗を喫してどん底にいた。チーム崩壊の危機にさえ思えた。そんな最悪の雰囲気を変えてくれたのが、新戦力のラムズデイルであった。第4節から定位置を確保すると、いきなり無失点でチームに初勝利をもたらし、そこからリーグ戦8試合無敗の原動力に。同時期に加入した日本代表DF冨安健洋とともに、アーセナルの最終ラインを立て直してみせたのだ。そして、ピンチを防いだ後にラムズデイルと冨安がハイタッチと固い抱擁で喜ぶシーンはサポーターに希望をもたらした。

昨年9月26日、3-1で制したプレミア第6節トッテナム戦での胸熱シーン。ともに加入後3戦目で、初のノースロンドンダービーだった。冨安も同じ1998年生まれ

神セーブしたり、敵ファンと「クソだ、ワ~!」と叫んだり

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。