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破産まっしぐらから持続可能なクラブへ。エリオットが仕組んだミランの復活劇

2022.05.30

ミラン11季ぶりのセリエA優勝は、将来有望な20代前半のタレントに投資を集中する戦略が理想的な形で結実した「オフ・ザ・ピッチ」の勝利でもあった。エリオット・マネジメントが経営権を握って4年、その若きチームを下支えしてきた取り組みを「サッカー×ファイナンス」分野の論客、schumpeter氏が解説する。

 2018年7月、米国の大手ヘッジファンドであるエリオット・マネジメントがオーナーとなったミランは、実のところ酷い財政状態に陥っていた。負債を返済する余裕はなく、エリオットが増資によってキャッシュを注入していなければ、クラブは破産し、過去のパルマ、フィオレンティーナのような降格の危機に瀕していた旨を、CEOのイバン・ガジディスが2019年に認めている。また、競技面でも2014-15シーズンからCL出場権を逃し続けており、長らく低迷期に陥っていた。

 それから4年後の2022年5月22日、セリエA第38節サッスオーロ戦を敵地で迎えたミランはスクデットを掲げていた。8シーズンぶりに復帰したCLではグループステージ敗退に終わったものの、11シーズンぶりにセリエAの王座を奪還したのだ。しかも、4年前とは異なり、実質的に無借金の財政状態、かつ黒字化も視野に入った経営成績で、持続可能なクラブに生まれ変わっていた。

 もちろんこの復活劇は、第一に選手とステファノ・ピオーリ監督をはじめとするテクニカルスタッフによる「オン・ザ・ピッチ」の頑張りによるものに他ならない。だが、エリオットによる「オフ・ザ・ピッチ」の活躍がそれを下支えしていたことを以下で述べたい。コマーシャル部門の立て直しについては『フットボリスタ第86号』で寄稿しているので、そこで触れられなかった取り組みを中心に取り上げよう。

コスト抑制と勝利の両立

 エリオットは確かにフットボール業界には馴染みのない素人と言えるものの、業種を問わず企業再生に長けている。本来のポテンシャルを発揮できず成長が停滞していたり経営不振に陥っていたりする企業の株式を取得し、その経営陣に外部のプロフェッショナル人材を採用する一方、自ら社外取締役を取締役会に送り込んで経営を監督することを通じて、企業価値を向上させる。その後、IPO、他社への売却などを通じてリターンを獲得し、資金を提供してくれた機関投資家に元手と利益の一部を分配し、残った差額で彼ら自身も儲けるということを生業の一部としている。

 そんな彼らが今回成し遂げた快挙と言えるのが、コストを抑制しながらもピッチ上で勝利を収めるという一見矛盾した要求を同時に達成したことである。選手層は人件費、減価償却費が比較的安価に抑えられる若手を中心に構成された。イタリアのTV局『スカイ・スポルト』によると、2021-22シーズンのスクデットを獲得したミランの平均年齢は25.8歳で、セリエAが勝ち点3制を採用して以降で最も若い優勝チームとなった。ちなみに、11年前の2010-11シーズンを制したミランの平均年齢は29歳で、唯一その時にも在籍していたのがズラタン・イブラヒモビッチである。……

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Profile

schumpeter

2004年、サッカー雑誌で見つけたミランのカカを入口にミラニスタへ。その後、2016年に当時の風間八宏監督率いる川崎フロンターレに魅了されてからはフロンターレも応援。大学時代に身につけたイタリア語も活かしながら、サッカーを会計・ファイナンス・法律の視点から掘り下げることに関心あり。一方、乃木坂46と日向坂46のファンでもある。

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