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韓国人選手を苦しめる「兵役」という難題。サッカー人生を左右する“義務”に彼らはどう向き合っているのか

2021.12.26

オリンピックやアジア大会の開催が近づくと、その「免除」をめぐるニュースが日本でも話題に上がる韓国人選手の兵役義務。ソン・フンミンら欧州で活躍するトッププレーヤーやJリーグ勢を通して、彼らの事情に触れたことのあるファンも多いだろう。満28歳までに入隊して約2年、軍隊生活を送らねばならないという、とりわけスポーツ選手にとっては深刻な問題となっている兵役について、韓国サッカー界に精通する金明昱さんに内情を解説してもらった。

 Jリーグは2021年シーズンを終え、各クラブは新たな補強を進めているところだが、隣国Kリーグからも数人の選手が日本行きを模索していると聞く。

 ただ、海外でプレーするにしても韓国人選手には、常に頭に入れておかなければならないことがある。それは兵役だ。

 今も朝鮮半島は南北が分断されたままで、休戦状態にある。名目上は“戦時中”であることから、韓国では「兵役法」ですべての成人男子(韓国では満19歳で成人)に兵役の義務が課せられている。19歳を迎えたタイミングで入隊するわけではなく、大学在籍中や社会人になってからの人もいれば、芸能・スポーツ活動によって延期する人もいる。

 現在の兵役法では満28歳までの入隊と決められており、期間は最短でも21カ月(最長24カ月)だ。

 特にプロスポーツ選手にとって、約2年の軍隊生活は非常に厳しい。除隊後、競技に戻った後のパフォーマンスに大きく影響を及ぼすのは想像に難くない。これまで積み上げてきたものをすべて失うかもしれず、脂の乗った時期に行くのは避けたいのが本音だろう。

免除されても、最大60日の軍事訓練は必須

 そこで“兵役免除”という措置がある。

 4年に1度のオリンピックで銅メダル以上、アジア大会(アジア競技大会)で金メダルを獲得することが条件。サッカーの場合だと、記憶に新しいのは2012年ロンドン五輪で韓国代表が日本代表との3位決定戦で勝利した時、もう一つはジャカルタ/パレンバンで行われた2018年アジア大会で韓国代表が優勝した時だ。

 過去には2002年日韓W杯でベスト4入りした韓国代表や、2006年(第1回)ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表に連勝してベスト4入りした野球の韓国代表が兵役免除されているが、これは特例措置。

 つまり五輪とアジア大会でメダル獲得を目指すのが、今では常套手段だ。2018年アジア大会の金メダルメンバーには、オーバーエイジ枠で出場したソン・フンミン(トッテナム)と元ガンバ大阪のファン・ウィジョ(ボルドー)の他、ファン・ヒチャン(ウォルバーハンプトン)らがいるが、彼らが欧州で伸び伸びとプレーできているのは、兵役免除の恩恵を受けているからでもある。……

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Profile

金 明昱

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。大学卒業後に新聞記者として幅広い分野で取材活動を経験。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。Jリーグ、Kリーグ、ACL、代表戦のほか韓国と北朝鮮スポーツを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。