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先発? それともスーパーサブ? ソン・フンミンの起用法をめぐり割れる識者たちの見解

2023.02.23

 ソン・フンミンは“スーパーサブ”なのか? トッテナム界隈でこのテーマが話題となっている。

 韓国代表FWソン・フンミン(30歳)は、間違いなく世界的ストライカーだ。昨シーズン、プレミアリーグでリバプールのFWモハメド・サラーと並ぶ23ゴールを叩き出し、アジア人として初めてプレミアリーグの得点王に輝いたことは記憶に新しい。しかし、今シーズンは少し苦戦を強いられている。

 リーグ戦ではここまで22試合でわずか5ゴール。ゴール期待値(xG)を見ると「5.29」となっており、妥当な数字なのかもしれない、だが、ソンの基準からすればもの足りない。彼のリーグ戦でのゴール数が「xG」を下回るのは、加入1年目の2015-16シーズン以来7年ぶりのこと。昨シーズンに至っては、「16.99」のxGを6点も上回る23ゴールを決めていたのである。

 そういったこともあり、彼の起用法に注目が集まるようになった。

 というのも、今季のソンの5ゴールのうち、実に4ゴールが途中出場によるものなのだ。昨年9月のレスター戦では、ベンチスタートから59分に投入されると73分から86分までの13分間でハットトリックを達成し、チームを6-2の勝利に導いている。そして、今月19日に行われたウェストハムとのロンドンダービーでも、韓国代表エースは交代出場からネットを揺らしてみせた。

 試合後に「自身のパフォーマンスについて、もっともっとできることはわかっているし、もっと改善したいんだ」と今季の自分の出来に不満を示した上で、ベンチスタートを言い渡されても前向きに考えていたことを明かした。

 「どんな選手だって、ベンチには座っていたくないもの。でも僕はベンチに座りながら、常にどうやったらチームを助けられるか考えているんだ。そして今日も投入された時に、それをやったんだよ」

ウェストハム戦でのソンのゴールシーンのハイライト動画

 ウェストハム戦でのゴールで、ソンはプレミアリーグ通算98ゴール。史上34人目、アジア人としては初の100ゴールまであと2ゴールに迫り今シーズン中の達成が目前となった彼を、どう使うのが正解なのか?

「彼(ソン)をもっと怒らせてもいい」

 トッテナムは昨夏、5000万ポンドという大金でエバートンからブラジル代表FWリシャルリソンを獲得しており、彼とソンがポジション争いを行っている。これまではリシャルリソンがケガに悩まされていたこともあり先発はソンで固定されてきたが、ウェストハム戦ではリシャルリソンが先発起用されるも不発に終わった。

 それでも、当分はリシャルリソンを先発起用すべきだと考えるのは、チェルシーなどで活躍した元オランダ代表FWジミー・フロイド・ハッセルバインク。

 「リシャルリソンの出来は不十分だったが、連続してチャンスを与えるべきだ」とハッセルバインクは『Sky Sports』で主張した。

 「そうじゃないと、彼を殺すことになる。だから3、4試合は先発起用すべきだ。ソンは結果を出したが、彼を(スタメンから外して)もっと怒らせてもいい。試合が進み、オープンになってスペースができた方がプレーしやすい。そうなってから投入すればいい」

 一方で、元ブライトンのFWグレン・マリーなどは韓国代表FWの先発起用を推す。

 「ソン・フンミンは違いを生み出した。攻撃と守備の繋ぎ役となり、多くのチャンスを演出した。彼がゴールを決めたことは、チームにとって非常に大きい」と『BBCラジオ』で語った。

 トッテナムでも活躍した元アイルランド代表FWロビー・キーンは、先発を外されながら結果を出したソンの姿勢を『Sky Sports』で称えた。

 「ふて腐れる選手もいれば、受け入れようとしない選手もいる。だがソン・フンミンは違う。彼はどんな時だってインパクトを残して見せる。今季の彼は苦しんできた。そういう時は、尻を蹴られるようなカンフル剤が必要だったりするものさ。それに対して、ソンはちゃんと奮起してみせた」

 果たして、このままソン・フンミンは“スーパーサブ”として起用されるべきなのか? 100ゴールの大台に迫っている韓国代表のエースストライカーの今後に注目したい。

Photo: Getty Images

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ソン・フンミントッテナム

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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