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【UU分析】トゥへルがチェルシーを変貌させた4つのポイント

2021.08.14

2019-20のCLでパリ・サンジェルマンを準優勝に導いたにもかかわらずその4カ月後の2020年末に解任された47歳のドイツ人指揮官は、2021年1月26日から着任した新天地で見事、雪辱を果たした。空中分解寸前のチェルシーを欧州王者にまで上り詰めるチームに短期間で仕立て上げたトーマス・トゥヘルの手腕。[3-2-5]のチーム構造、攻撃時のメカニズム、守備ブロックの攻略法、プレッシングの原則、という新監督による4つの変更点に注目したイタリアのWEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』の解説記事(2021年3月23日公開)を特別掲載。先日公開したドイツの戦術サイト『シュピールフェアラーゲルンク』によるマンチェスター・シティ分析シリーズと合わせて楽しんでほしい。

フットボリスタ第85号』より掲載

 去る2021年1月25日、前日のFAカップ4回戦ルートン(2部)戦で3-1の勝利を収めたにもかかわらず、チェルシーはフランク・ランパード監督の更迭を決めた。リーズを同じ3-1で下し、プレミアリーグで首位からわずか2ポイント差の3位に浮上してからまだ2カ月も経っていなかったが、その間にランパード率いるチームはリーグ戦8試合を戦って5敗を喫するという不振に陥っており、これが解任の決定的な要因になったことは明らかだった。こうしてプレミアリーグで9位にまで転落したチェルシーを立て直し、トップ4に導くという任務を委ねられた後任監督は、2019-20シーズンのCL決勝へ導いたパリ・サンジェルマンを解任(2020年12月29日)されて間もなかったトーマス・トゥへル。順位の回復はもちろんだが、それ以上に求められていたのは、ランパードの下で自信を失い、空中分解寸前だったチームに新たなアイデンティティを与え、そのパフォーマンスを改善することだった。

 ロンドンに到着したトゥへルには、最初の試合であるリーグ第20節ウォルバーハンプトン戦に向けてチームを準備するための時間がわずか24時間しか残されていなかった。その後に収録されたリオ・ファーディナンドによるインタビューでトゥへルは、この短時間で戦術的に何らかの手を打つことは不可能だという認識の下、まずキャプテンのセサル・アスピリクエタをピッチに送り出すこと、そして中盤にセントラルMF(以下CMF)を2枚並べることを出発点とすることを、スタッフとともに決断したと語っている。0-0の引き分けで終わった初戦は順位表にはほとんど影響を及ぼさなかったものの、その新たな布陣による説得力のあるパフォーマンスは、トゥへルにチームを構築する確かな土台を提供することになった。

チーム構造の変更

Il cambio di struttura……

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ウルティモ・ウオモチェルシートーマス・トゥヘル戦術

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ウルティモ ウオモ

ダニエレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。

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