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VAR後のサッカーは日本に有利?「マリーシアがない」が強みになる時代

2021.07.30

大きな期待を背負って地元開催の東京五輪に臨んだ日本代表は、3戦全勝という完ぺきな内容でグループステージ突破を決めた。現地取材している川端暁彦氏に日本の戦いぶりの総括を依頼したが、彼が注目したのは「VARが変えたサッカーが、日本代表が今まで追求してきたスタンスに有利に働くのではないか」――という1つの仮説だった。

 「グループステージ24試合で、出されたレッドカードは12枚も出ているんです」

 日本サッカー協会の反町康治技術委員長は、東京五輪の男子サッカー競技に関する特徴として、しっかり事前の準備をしてメンバーを揃えられた国が勝ち上がっていることに加え、そんなデータを挙げた。日本もグループステージの2試合で対戦相手にレッドカードが出るという経験をしている。

ペナの中でも外でも「ファウルはファウル」

 「2つともVARが入った上での判定である、と。これはやっぱり今のサッカーを象徴している部分がある」

 反町委員長はそう続ける。VARの導入でPKやレッドカードといった勝敗に直結する判定について映像を使って試合を追いかけるVARによる介入が行われるようになったのは周知の通りである。

 これは単に判定を正すというだけでなく、主審に「もし間違っていたら訂正してもらえる」という勇気を与える心理的側面も見逃せない。従来はレッドカードやPKがもし誤審ならば勝敗をひっくり返しかねないので主審もその判定を下すのをためらうのが普通のことだった。VARによるチェックと合わせ、PKとレッドカードの頻度を高める結果になっているのは確かだろう。

 私が直接スタジアムで観ていた試合では韓国とホンジュラスのグループステージ第3節が最も印象的で、3つのPKが韓国に与えられ、1枚のレッドカードがホンジュラスに提示された末に、6-0で韓国の勝利となった。この試合、ホンジュラスは12回しかファウルしていないので、4回に1回はPKだったことになる。

ホンジュラス戦でチーム4点目となるPKを蹴り込み、ハットトリックを達成した韓国代表FWファン・ウィジョ。ガンバ大阪での活躍が記憶に新しい、Jリーグファンにはお馴染みのストライカーもオーバーエイジ枠で東京五輪に参戦している

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Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。

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