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タビナス・ジェファーソンが抱える感謝の念。フィリピン代表に選ばれるまでの苦悩と挑戦

2021.07.14

タビナス・ジェファーソン(水戸ホーリーホック)独占インタビュー

先日行われたFIFAワールドカップ・アジア2次予選で、自ら選択したフィリピン代表の選手として、国際Aマッチを経験した水戸ホーリーホックのタビナス・ジェファーソン。桐光学園高校時代から注目を集めていた逸材にとって、プロサッカー選手になってからの道のりは決して平坦ではなかった。川崎での苦悩。岐阜での気づき。G大阪での飛躍。そして、充実した水戸での今。22歳の俊英が、国を背負うことで感じた思いと、これまで辿ってきたプロキャリアを語る。

代表選手として戦うこと、国を背負って戦うことの意味

――フィリピン代表でのFIFAワールドカップ・アジア2次予選、お疲れ様でした。帰国してから2週間はバブル方式での生活を送ったそうですが、どのような生活だったのでしょうか?

 「空港から帰ってきて、そのままクラブスタッフの方に水戸のホテルに連れて行ってもらって、そこから2週間のバブル生活に入りました。自主練習をするために1人でグラウンドには行けるんですけど、それ以外はホテルから一歩も出てはいけないという状況です。食事も部屋の前まで運んでもらって、部屋で1人で食べるという生活です」

――フィリピン代表活動中もバブル方式での生活を送っていたと思いますが、それはチームとしてバブルの中に入っていたわけで、日本では1人でバブル内にいるということですよね。

 「フィリピン代表で滞在したドーハとドバイでは、チームとしてバブル方式の生活を送りました。その時も練習以外は部屋から出られませんでしたし、チーム関係者以外と関わってはいけないという状況でしたが、食事の時はチームメイトと一緒に食べることができたんです。なので、時間の流れが早く感じました。日本ではずっと1人なので、時間の流れが遅いです」

――練習以外の時間は何をしていますか?

 「本を読んだり、サッカーを見たり、ゲームをしたりという感じですね」

――国によって対応が異なるみたいですね。

 「違うみたいですね。カタールでは専用のアプリで管理されていました。一般の方の場合は1週間の隔離が必要なのですが、僕らは特例で入国を認めてもらっていて、1日の隔離で済みました。UAEでは隔離はなかったのですが、チームとしてバブル方式での生活となりました。代表での活動が終わって、選手はいろんな国に戻ったのですが、オランダやアメリカではバブル方式生活や隔離はなかったそうです」

――なるほど。日本はオリンピックがあるので厳しいのかもしれないですね。さて、まず代表のことについてお話を聞かせてください。フィリピン代表に選出され、ワールドカップ予選で3試合にフル出場を果たしました。いかがでしたか?

 「日本にいたらなかなか経験できないことを、たくさん経験することができました。それは自分としてすごくよかったです。特に1試合目の中国代表戦は予選突破をかけた大一番だったので、チームとして勝つために集中して取り組むことができました」

――日本で経験できない“経験”とは?

 「国を背負って戦うことですね。言葉で言うのは簡単ですけど、気持ちと気持ちの戦いみたいなところがありました。中国代表戦は自分たちのやりたいサッカーを捨てて、勝つために戦術を大きくシフトチェンジして戦いました。相手にボールを渡して、できるだけ自分たちは守備で主導権を握るように戦ったんです。そして、数少ないチャンスを決める狙いで試合に臨みました。タラレバになりますが、前半のチャンスを決めていれば、結果は違っていたのかなと。そういう試合になりました。Jリーグで自分たちのサッカーを捨ててでも勝ちに行くという試合は、そんなに多くないと思うんですよ。それを経験できたことは自分にとって大きかった。『こういうサッカーもあるんだ』と学ぶことができました」

W杯アジア2次予選の中国戦で、フィリピン代表デビューを飾ったタビナス選手

――強い思いを持って臨んだフィリピン代表の試合だったと思います。最もアイデンティティを感じた瞬間はいつでしたか?

 「国歌斉唱の時は『誇りを持って戦おう』という気持ちになりました。自分の感情が最も高ぶった瞬間でした」

――フィリピン代表にはタビナス選手だけでなく、いろんな国で生まれ育った選手がいます。みんな、国家に対する思いは強いのでしょうか?

 「フィリピンにルーツを持っていて、二重国籍を持っている選手が多い。育った国は違えども、フィリピンのために戦うという思いで一つになりました」


――フィリピン代表にはヨーロッパでプレーしている選手もいますが、そういう選手と一緒にプレーして刺激を受けたのでは?

 「受けましたね。僕もいつか海外でプレーしたいと思うようになりました。今回、プレミアリーグでプレーしている選手はケガで辞退したんですけど、それ以外にもザルツブルクでプレーしていた選手や、ポルトのユースに在籍していた選手がいました。また、マラガやカーディフといったチームでプレーしていた、スペインとのミックスのベテラン選手もいます。そういう選手から、『ジェフは若いんだから、ヨーロッパに出てプレーしなよ』という話をしてもらいました。自分の目標がより明確になった気がしました」


――代表戦に出場して、世界のスカウトから見られている実感もあったのでは?

 「それはありました。実際、いろんな人から連絡をいただきましたし、多くの人に自分のプレーを見てもらうことができました。それはすごくうれしかったです。もっともっと自分をアピールしていきたいと、改めて思うようになりました」


――日本を飛び出すと、新たな世界が広がりますよね。
……

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佐藤 拓也