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就任後7勝1分。クラモフスキー監督はギャンブルにあらず。モンテディオ山形の歴史と覚悟

2021.07.06

4月30日、モンテディオ山形は新監督として、ピーター・クラモフスキーの就任を発表する。昨シーズンの印象的な戦いを受け、実力者の揃う新戦力を補強。J1昇格を目指していたチームは石丸清隆監督を解任し、オーストラリア人指揮官にバトンを託した。Jリーグでの実績に乏しい新監督の手腕を疑問視する声もある中で、今回の決断にはクラブが辿ってきた歴史と、それに基づいた覚悟が間違いなくある。その背景を、NEC山形サッカー部時代からチームを丹念に取材してきた佐藤円が綴る。

クラモフスキー監督就任が与えた周囲へのインパクト

 石丸清隆の監督解任発表から8日経った4月30日、モンテディオ山形が発表した後任監督の名前は、ピーター・クラモフスキーだった。

 石丸体制の昨シーズンは後半にギアを上げて7位。今シーズンは昇格候補に推す声もあり、クラブもそこを明確な目標に設定したが、開幕から1勝4分4敗と振るわなかった。シーズン途中での監督解任はクラブ初のこと。早い決断には驚かされたが、その後任にクラモフスキーの名前が出ることには、それ以上のインパクトがあった。昨シーズンまで愛媛FCで指揮を執っていた川井健太のコーチ就任が同時に発表されたことも、山形の熱量の高さを示すものとなった。

 ピーター・クラモフスキーは、Jリーグではアンジェ・ポステコグルー監督の横浜F・マリノスで2018、19年の2シーズンに渡ってヘッドコーチを務め、19年にはJ1リーグを制覇。昨シーズンは清水エスパルスで監督としてのキャリアに就いたが、25試合で3勝5分17敗。シーズン終了を待たずに契約解除となっていた。

 この新監督の人選に関して、ネット上では「大きな賭け」「ギャンブル」というワードが散見された。状況から察するに、クラブ初の監督解任に踏み切った後任に、クラブ初となる外国人監督を充てたこと、失点の少ないチームが昇格しやすい傾向にあるリーグで、さらに攻撃的なスタイルを進めようとしていたこともあるだろう。加えて、前年の清水で成績不振に終わったことへの懸念も小さくなかったように思う。

 5月2日、オンラインで行われたクラモフスキー監督就任内定の会見で、この人選を『ギャンブル』と捉えられることについての見解を、強化部長の高山明泰に尋ねてみた。高山は「ギャンブルだとは全然思っていないです」とはっきりと否定したうえで、こう説明した。

 「昨年、クラモフスキー監督は清水でサッカーを作り上げている『途中の段階』で、監督を退くことになったと捉えています。確かに清水で作り上げていく過程の中で表現していたサッカーは、魅力的な面もあれば危うい面もあったと思いますが、作り上げる過程を考える上では、昨年の降格のないレギュレーションも念頭にあったと思います。今回は昨年とは異なり4チームが降格するレギュレーションの中で、シーズン途中から指揮を執ることになります。それを踏まえてチーム作りをしていくことをお互いに確認した上で、(昨季の清水とは)異なる過程でやっていくことができれば問題ないと考えました。なので、ギャンブルだとは思っていません。ただ、難しいことへのチャレンジだという認識はあるので、監督、コーチ、選手、そしてクラブが不足する部分を埋めていくために、ハードワークしていくことは必要になってくると思っています」

モンテディオ山形の公式YouTubeチャンネルでも配信されたクラモフスキー監督就任内定記者会見

山形県民に根差した「おしんサッカー」の先へ

 もう1つ、クラモフスキー監督就任がサプライズとして受け取られた背景には、これまでの山形の立ち位置も少なからず影響しているように思う。……

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ピーター・クラモフスキーモンテディオ山形文化

Profile

佐藤 円

1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。

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