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清水エスパルスの不調は「想定内」。新たな哲学を築く、変革のための一年

2020.09.22

J1開幕から続いたリーグ戦の連敗を5で脱し、一時は上昇気流に乗りかけるも、再びクラブワーストタイの7連敗。昨季ヘッドコーチとして横浜F・マリノスの優勝に貢献したピーター・クラモフスキーを新監督に招へいし、注目を集めた清水エスパルスだが、ここまで18試合を終えて勝ち点わずか12と不安定なシーズンを送っている。彼らが不調に陥っている理由は何なのか?清水の戦術分析記事を書き続ける猫煮小判氏が解説する。

そもそも「不調」なのか?

 今回、ご縁がありフットボリスタに寄稿しているのだが、冒頭からいきなりテーマ「不調に陥っている理由」に反する回答になってしまうかもしれない。それは、そもそも「今季の清水エスパルスを不調と表現するべきなのか」ということだ。

  確かに、J1前半戦の17試合で手にした勝ち点9は、降格した2015年の勝ち点10を下回る数字。さらには2勝3分12敗、リーグ最多失点を記録するなど、不調と見られても不思議ではない。いや、その見方こそが正しいだろう。しかし、今季の清水を探る上でいくつか考慮すべきポイントがある。

 まず、昨シーズンのサッカーとは正反対のスタイルをやっていること。今季から就任したピーター・クラモフスキー新監督の下、昨年の「気持ちディフェンスからのドウグラス(現ヴィッセル神戸)よろしくカウンター」という単純な戦術からの脱却を試みている。180度向きの変わる新戦術を簡単に吸収できるほどサッカーは甘くない。

 続いて、選手が大幅に入れ替わったこと。2月23日に行われたリーグ開幕戦FC東京戦のスタメンのうち、新加入組は6人。新型コロナウイルスによる中断明け初戦となった第2節、名古屋グランパス戦では7人に増えていた。さらに、昨季からレギュラーと呼べるのは金子翔太と西澤健太の2人だけなので、大多数のメンバーが変更されているのだ。

 また、新型コロナウイルスによる影響も忘れてはならない。約3カ月の中断があったとはいえ、対外試合を多く組められるような状況ではなかったし、再開後は中2、3日の超過密スケジュールによって貴重な準備期間を失っていた。実戦を重ねながら行うトレーニングは、練習試合では感じることのできない「本物の課題」に取り組める時間でもあるのだ。

 以上を踏まえた上で、日程面を除けば、今の結果は「想定していた」とも言える。降格なきレギュレーションへの変更もあったとはいえ、来季への準備期間として今シーズンを受け入れるべきだろう。

「偽SB」から紐解く清水の課題

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戦術清水エスパルス

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猫煮小判

静岡県静岡市…いや、静岡県清水市に生まれ育った自称次郎長イズムの正統後継者。好きな食べ物はもつカレー、好きな漫画はちびまる子ちゃん、尊敬している人は春風亭昇太師匠。そして、1番好きなサッカーチームは清水エスパルス!という、富士山は静岡の物でもの山梨の物でもない日本の物協会会長の猫煮小判です。君が清水エスパルスを見ている時、清水エスパルスも君を見ているのだ。

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