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ソーシャルメディアが誹謗中傷や差別の温床に。プレミアリーグが「SNSボイコット」を決断した背景

2021.04.26

4月24日、プレミアリーグは「SNSボイコット」の実施を発表。プレミア全クラブが4日間SNS更新を控える大規模な抗議活動に賛同した背景には、イングランドで深刻化するインターネット上での誹謗中傷や差別がある。リバプールを中心に現地の情報を追い続ける田丸由美子氏に解説してもらった。

 マーケティング会社Redtorchの調査によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で欧州サッカーが中断した2020年3、4月の間だけで、サッカー選手のInstagramフォロワー数は6%増加したという。コロナ禍以前と比較して成長が加速したのはフットボーラーのみで、同社はピッチ外のプライベートの姿を積極的に発信するようになったのが一因だと分析している。とりわけ好評だったのは、選手がカジュアルにファンと交流するInstagram Liveのような映像コンテンツ。視聴された回数は82%も伸びていたそうだ。

 SNS上で影響力を増している選手たち。しかしそれから1年が経つ中で、ファンからのオンラインヘイトが爆発的に増加しているのも事実だ。特に21年に入ってからイングランドサッカー界では、毎週のように被害が報告されている。1月にはリース・ジェイムズ(チェルシー)、ロメイン・ソーヤーズ(ウェストブロミッチ)、アクセル・トゥアンゼベ、アントニー・マルシャル、マーカス・ラッシュフォード(ともにマンチェスター・ユナイテッド)が、TwitterやInstagramで人種差別の標的となった。

「そう、僕は黒人でそれを誇りに思って日々を過ごしている。誰に何と言われようと気にしない」と反応したラッシュフォード

 2月にはアレックス・ヤンケビッツ(サウサンプトン)、ローレン・ジェイムズ(マンチェスターU女子)、ヤン・ダンダ(スワンジー)、3月にはフレッジ(マンチェスターU)、ベン・カバンゴ(スワンジー)、4月にはジャマル・ロウ(スワンジー)、カラム・ロビンソン(ウェストブロミッチ)、トレント・アレクサンダー・アーノルド、ナビ・ケイタ、サディオ・マネ(ともにリバプール)、リンソラ・ババジデ(リバプール女子)、コリン・カジム・リチャーズ(ダービー)、ラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)、ソン・フンミン(トッテナム)がSNS上で差別的発言を浴びている。

ソン・フンミンに連帯を表明するトッテナム公式Twitter

オンラインヘイト急増の理由は無観客試合?

 1年間で深刻化したオンラインヘイトだが、20年4月の時点で予測していたデータ会社がある。AIを用いてインターネット上の誹謗中傷を分析し、企業や団体に予防策を提案しているSignifyだ。……

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イングランド文化

Profile

田丸 由美子

ライター、フォトグラファー、大学講師、リバプール・サポーターズクラブ日本支部代表。年に2、3回のペースでヨーロッパを訪れ、リバプールの試合を中心に観戦するかたわら現地のファンを取材。イングランドのファンカルチャーやファンアクティビストたちの活動を紹介する記事を執筆中。ライフワークとして、ヨーロッパのフットボールスタジアムの写真を撮り続けている。スタジアムでウェディングフォトの撮影をしたことも。

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