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決定力不足は脳内で起きているPart2。ストライカーは、なぜ急にゴールが取れなくなるのか?

2021.01.22

決定力不足は脳内で起きている。イタリアNO.1メンタルコーチの教え』(無料記事)で大きな反響があったロベルト・チビタレーゼ。イタリアで最も有名なメンタルコーチの1人であり、多くの有名サッカー選手をクライアントに抱える心の専門家に、ストライカーが抱えるメンタルの悩みとその解決法をインタビューさせてもらった。

※取材日は2020年3月、原稿内の情報はすべて取材時点のもの

ゴールへのプレッシャー=強迫観念

──CFというのは、チームの勝利のために絶対に必要な要素であるゴールを決めることを仕事にしている点で、サッカーチームを構成する11人の中でも非常に重要であると同時に、ある意味では特殊なポジションだと思います。このポジションの特徴や特殊性をメンタル的な側面から見た時に何が浮かび上がってくるか、というところから話を始めさせてください。

 「特殊性ということで言うと、CFはGKと同じく『ゴール』に直接的に関与するポジションです。チームが準備した決定機をゴールという具体的な形にする仕上げ役として、巨大な責任を背負ってプレーしなければなりません。もし彼がしくじれば、チームメイトたちの仕事がすべて無駄になってしまう。MFがパスを1つミスしても、それが試合の行方を直接的に左右することはほとんどありません。次のプレー機会にそのミスを取り返すことも難しくありません。しかしCFは、DFやMFと比べて、プレーに関与しボールに触る頻度がずっと低く、1つのプレーがチームの勝敗を左右する度合いも大きい。一つひとつのプレーに対して、より大きな責任とそれがもたらす重圧がのしかかるポジションであることは間違いありません。その副次的な結果として、CFにはより大きな注目が集まり、毀誉褒貶にもさらされやすいという側面もあります」

──そのプレーに対する評価も、純粋なパフォーマンス以前にまずゴールという数字で判断される部分がありますよね。

 「CFについて一番最初に見るのは必ず、いくつゴールを決めたか、ですよね。もう少し掘り下げるとしても、何試合で何ゴールか、あるいはプレー時間何分につき得点を挙げているかです。CFの仕事はゴールだけではないし、中にはフィニッシュよりもむしろポスト役になって潰れたりスペースを作ったりしてチームに貢献することを求められている選手もいます。でも判断と評価の基準は常にゴールです。チームのためにたくさん重要な仕事をして勝利に貢献しても、ゴールを決めなければネガティブに見られてしまう。特に外部、マスコミやサポーターからの視線はそうです」

──そうした特殊性は、メンタル的な側面でCFにどんな影響をもたらすものなのでしょうか?

 「何よりもまず巨大なプレッシャーです。CFは常に、自分はゴールを決めなければならないという重圧の中でピッチに立っています。だから、たとえチームが勝ったとしてもゴールを決めなければ喜びも半分になる。自分はその勝利に参画できなかったという気持ちがどこかに残るからです。今見たように、CFに求められている仕事はゴールを決めることだけではありません。しかしプレーに対する判断や評価は常にゴールに、ゴールのみに基づいている。このギャップはCFに小さくない心理的問題をもたらします。まずはゴールへのプレッシャー。監督に求められた仕事を十分にこなして勝利に貢献するかしないかとは別のところに、自分がゴールを決めるか決めないかという問題がある。それが自分にとって決定的な違いであることをCFは肌身で知っています。その差はGKの失点よりも大きい。GKも自分の仕事はゴールを防ぐことでありそれが決定的な違いになることを知っているけれど、ゴールを決められたとしてもよほど大きなミスでなければ取り沙汰されることはないし、気持ちを切り替えることもできる。GKの失点とCFの得点を比べたら、失点の方が倍以上多いのが普通ですからね」

──CFはゴールを決めなければならないという強迫観念に常に苛まれている、と言ってもいいのかもしれませんね。試合中だけでなく、試合前、日々の日常においてもそうなのでしょうか?

 「もちろんです。皮肉なのは、ゴールをたくさん決めているCFは、むしろそれをさらに強く感じているということです。周りから試合を決めてくれる頼もしい存在だと見られるほどに、ゴールに対する期待もまた高まるからです。次の試合でもゴールを決めなければならないというプレッシャーは、弱まるどころかさらに強くなる」

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メンタルロベルト・チビタレーゼ

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。