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【短期集中連載】名鑑から妄想するtkq的W杯プレビューE組&F組:スペインの悲運のエースからカナダの“サイレント・ジャイアント”まで

2022.11.16

 グループ分けとかすっかり忘れていて、名鑑を読んでそういえばこんなグループ分けだったっけと思い出しながら書いています。さすがに日本のグループは覚えてましたが、グループFとか完全に忘却の彼方でした。うっかりイタリアが出場することになっているミスが起きていたとしても、気づかずにプレビューを書く可能性はかなり高いです。その場合は私のミスではなく、footballistaの名鑑のせいなので、私を責めないでくださいね。

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グループE

〇スペイン

 ロンドン五輪、東京五輪で当たっているので、なんだかお初な感じがしないのですが、W杯で対戦するのはお初のスペインさんです。W杯、EUROを制覇していた頃のハイパーな面子には若干見劣りがしますが、それでもさすが世界の強国という感じのメンバーを揃えてきました。

 スペインと言えばパス回し!と短絡的に思いますが、今の代表はポゼッションにプラスして猛烈なプレスからボールを奪い、シンプルに速攻を仕掛けるやり方になっているようです。そのため、中盤中央はガビとコケというインテンシティがある選手がレギュラー。特にガビはバルサでも出場を重ねていながらも、まだ18歳。18歳でスペインのレギュラーってすごいですね。18歳の時、なにしてましたか? 私は初めて住んだ東京で、適当に外に出たら自分のアパートがどこかわからなくなってしまって、スマホもない時代だったので半泣きで警察に自宅の場所を聞いてました。これに19歳のペドリもいて、20歳のファティもいます。恐ろしいですね、出場は21歳からとかに今からルールを変えられませんか。

 そんなスペインの課題としては、得点力でしょうか。絶対的な点取り屋と言えるような選手が存在せず、ボールを握っても点を取れない展開は、スペインの歴史的な課題と言えるかもしれません。EUROでは5得点を取った試合が2試合あったものの、それ以外の3試合は1点ずつで、できれば5得点を各試合に分配したいような結果でした。W杯本大会でも苦しむ可能性がありますが、ここはアルバロ・モラタの奮起が必要なのではないでしょうか。EUROでは3点取ってるものの、それ以上にチャンスを外しまくった印象が強く、さらにはPK戦で外したことでスペインは敗退。その経緯もあるのと、本人のキャラも相まって、なんとなくエースという雰囲気にはなっていません。今大会でモラタは奮起してスペインの絶対的エースとして君臨する大チャンスかもしれませんので、ぜひ頑張っていただきたいです。ダメな場合には、今大会ナンバーワン・ドレッド賞の可能性もあるニコ・ウィリアムズに頑張ってもらいましょう。

〇ドイツ

 前回大会の優勝候補に挙げられながらもあえなくグループステージで散ってしまったドイツ。昨年のEUROでもベスト16で姿を消し、今大会は雪辱に燃えていることでしょう。長年監督を務めたレーブからフリックにスイッチしましたが、相変わらずの豪華メンバーですね。GKは恐ろしい守備範囲を誇るノイアーが締め、DFは世界最強クラスのCB兼ポグバの胸揉み師であるリュディガーと大巨人ズーレが立ちはだかり、中盤中央もゴレツカ、キミッヒ、ギュンドアンといて、アタッカーはサネ、ニャブリ、ミュラー、ハベルツ、ムシアラ、ゲッツェ、ブラントと誰が出ても怖そうな布陣。世界レベルのスピードと裏抜けから見事にシュートを外す「ぬか喜びストライカー」の系譜だったベルナーはケガで離脱しましたが、それも気にならないくらいの陣容です。

 この面子で、ひたすらポゼッション重視だったレーブ時代とは違って、鬼の前プレでごりごりとボールを奪いにくるようですね。だいたい優勝を狙う大国の大会初戦は出力50%くらいのピクニック気分で来そうなんですが、ドイツはシャレが利かないのでフルスロットルで襲ってきそうなところもネックです。強いて上げれば純粋なセンターFWタイプで代表で結果を出した選手が見当たらないことくらいでしょうか。それでもフュルクルクはブンデスですでに二桁取って得点王争いをしています。

 ですがね、私は諦めません。名鑑を目を皿にして読んで弱点を探した結果、見つけましたよ(島田紳助風)。それは、トニ・クロースの不在です。抜群のパスセンスを誇り、今でもレアル・マドリーでバリバリに活躍するトニ・クロースがいないことはいくら豪華メンバーのドイツでも痛手なのでは……と思いましたが、余計なこと言って火に油を注ぐことも多いので、かえって不在はプラスな気もしてきました。あの手のキャラはミュラー1人で十分です。クロース大先生は今大会は部外者として炎上してください!

〇日本

 なんとも強敵揃いのグループに入ってしまったものです。先日メンバーが発表されましたが、大迫、原口などの落選がサプライズ気味だったとはいえ、概ね納得のいくメンバーがエントリーされたんじゃないでしょうか。むしろ、中山が大ケガを負ってしまって代わりに入った町野が一番のサプライズと言えるかもしれません。面子としては間違いなく過去最強でしょう。ちなみに、過去、ユースなどすべての経歴を通して、ジェフユナイテッド千葉に関係のある選手は1人もいませんでした。どうしてですか。

 対戦相手を見て、大会の焦点はハイプレスを掻い潜れるか、あるいはハイプレスでボールを獲れるか、というところになるのかなあ、と思います。できない場合は撤退カウンターとなるでしょう。苦戦することは間違いないですが、可能性は全然ゼロじゃないので、なんとかして欲しいものです。さて、日本代表のメンバーなんですが、今さら紹介しても「知ってる」「お前よりも知ってる」「インターネットで見た」という反応をされてしまうので、名鑑執筆者である川端さんの謎情報網を駆使した小ネタを紹介したいと思います。

 まずは、柴崎の「英『サン』紙から『日本のイニエスタ』と称賛された」というのが面白かったですね。全然違うじゃないですか、柴崎とイニエスタ。赤飯とパエリアくらい違います。さすが信頼と実績のサンですね、適当にもほどがあります。あとは、南野の「14年に『1分間最多ハイタッチ記録(187回)』という珍妙なギネス記録」というのがなんだかわからなくて、調べてみたらほんとにやったんですね。(なんで南野がこんなことをやっていたのかはよくわからなかったのですが、とにかくすごい記録です。と思ったら、2年後には100回以上抜かれてました。この記録、ハイタッチしたい人間をどれだけ集められるかにかかってるんじゃないでしょうか。この他にも面白エピソードが満載なので、名鑑を買いましょう(この最後の文は宣伝です)。

〇コスタリカ

 32番目という最後の順位でW杯出場権を獲得したコスタリカです。3大会連続の出場、2014年にベスト8に進出したメンバーがいまだに健在で、GKケイロール・ナバス、世界ナンバーワンバンドメンバーっぽい名前のサッカー選手ブライアン・ルイスなどが順当に選ばれました。高齢化は心配ですが、経験は非常にあるとも言えます。

 日本にとっても侮れない相手ですね。得点力は微妙なものの、守備の固さには定評があり、予選ではたったの8失点。屈強なDF陣もいるのですが、その後ろにいるナバスがゴールマウスに鍵をかけます。ただ、今季は所属先のPSGでドンナルンマにポジションを奪われているようで、試合勘が心配ですね。14年W杯では「これはちょっとしたスクーターくらいなら止められるのでは?」と思ったくらいに止めまくりましたが、今大会はどうなるでしょうか。

 さて、コスタリカの名鑑は面白エピソードの宝庫なのですが、ブライアン・オビエドの「過去に悟空とベジータが描かれたスパイクを履いて代表戦に出たことがある」、ジェルソン・トーレスの「長兄は将来有望な選手だったが麻薬に溺れてしまった」などなどの「えっ」と引っかかる記述が満載です。その中でも、一番引っかかったのはオスカル・ドゥアルテの「『マルカ』紙に“コスタリカのピケ”と評されたことがある」というエピソードでした。コスタリカのピケ。いいですね、この絶妙な胡散臭さ。もう褒めてんのかちょっとバカにしてるのかよくわからないですよね。世界サッカー異名審査委員会に所属してる私としては、垂涎もののあだ名です。「パレスチナのクリスティアーノ・ロナウド」とともに、額に入れて飾りたいと思います。

グループF

……

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Profile

tkq

世界ロングボール学会(WLBS)日本支部正会員。Jリーグの始まりとともに自我が芽生え、カントナキックとファウラーの薬物吸引パフォーマンスに魅了されて海外サッカーも見るように。たぶん前世でものすごく悪いことをしたので(魔女を10人くらい教会に引き渡したとか)、応援しているチームがJ2に約10年間幽閉されています。一晩パブで飲み明かした酔っ払いが明け方にレシートの裏に書いた詩のような文章を生み出そうと日々努力中です。【note】https://note.mu/tkq

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