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【短期集中連載】名鑑から妄想するtkq的W杯プレビューC組&D組:メッシ依存は週3ならOK、禁じられた「踊るGK」の未来

2022.11.14

 グループCとDです!

 大会前のプレビューを書いてる時の悩みとしては、まだ代表発表してない国もあったりして、メンバーが確定してないことなんですよね。また、たとえ選ばれたとしても、ケガで急遽外れたりなんかすることもあるわけです。なので、なるべく選ばれるであろう鉄板の選手を取り上げるか、ケガがないように祈りまくるか、あとは誰が取り上げられようがまったく関係ない話をすることが重要です。読みづらい名前が多いとか監督がかっこいいとかサッカーの内容にかすりもしない事柄を取り上げているのは、そういった高度な配慮の末の結果なのです! 本当です! 信じてください! そうやって、前のW杯でスペイン代表のロペテギ監督を取り上げたら、スペインの初戦の3日前にクビになってました。

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グループC

○アルゼンチン

 生きる伝説・メッシのラストダンスとなるW杯で、アルゼンチンは悲願を叶えられるでしょうか。昨年のコパ・アメリカでは28年ぶりの優勝で、念願の代表での国際タイトルを獲得することができました。この勢いでW杯も狙いたいものです。バルセロナからPSGにすったもんだの末に移籍しましたが、メッシはリーグ1でも得点を着実に重ねています。もちろん昔ほどのスピードは失われ、得点力も前よりは落ち、かつての「歩く大量破壊兵器」感は薄れてはいますが、それでもフリーマンとしてライン間でボールを受ければシュートもパスも何でもできる万能戦士っぷりは健在。メッシの代わりに、勢いのあるニワトリみたいな髪型をしたラウタロ・マルティネスとかディ・マリアが点を取ればいいんです。名鑑によると、一時期の「ゆりかごから墓場まで」感のあったメッシ依存もだいぶ緩和している模様。

 ただですね、それも程度だと思うんですよね。週5で家系ラーメン食べてたのを、週3に抑えて後はつけ麺にするとか、どう考えてもまだ依存してるんですけど、前に比べて減ったら依存してないって言うじゃないですか、この他に本当は二郎系ラーメンも2回くらい食べるのに(ここを薬物やアルコールの話にしなかった私を褒めてください)。でも、依存しててもいいじゃないかと思うんですよね、メッシには。だってメッシがいたらボール預けたくなるし、千鳥がいたらゴールデンで1時間の番組を任せたくなるじゃないですか。サッカー界に燦然と輝く偉業をすでに成し遂げているメッシのW杯でのラストダンスです。依存でもなんでもいいので、好きに踊ってもらいたいものです。その結果がもし優勝であれば言うことなしですね。

 さて、その他のメンバーですが、お馴染みの名前がいるところで、中盤のレギュラー候補にデ・ポルという知らない名前が。へー、新しい選手が出てきたんだなと思って調べたら、アトレティコ・マドリーのデ・パウル(旧表記)でした。このように、登場当初あるいは他媒体とは別の名前で出てくるパターンもありますので、ご注意ください。ちなみに、名鑑に載ってるフアン・フォイも同じパターンで、この選手は出場から2分で退場したことをリネカーにTwitterでいじられた、元トッテナムのフォイス(旧表記)のことです。新名称での最速退場も期待したいところですね。

○メキシコ

 「ナルコス」などの麻薬系ドラマを多数見ているせいで、私の中ですっかり無法地帯の印象が強くなってしまったメキシコですが、サッカーでは相変わらずの強豪です。昨年の東京五輪では、3位決定戦で日本を破って見事に銅メダルを獲得しました。その日本戦でも出場していたホルヘ・サンチェス、カルロス・ロドリゲス、ライネス、モンテス、ベガなどの若手や、OAで出場していたオチョア、マルティン、ロモなどがそのままメンバーに入ってきそうです。相変わらず主力のロサーノやエレーラも健在で、相手にしたらそう簡単に勝てるチームではありません。念願のベスト8進出も視野に入るのではないでしょうか……と思ったのですが、仮にC組2位でトーナメントに出場すると、D組1位でフランスあるいはそのフランスをネーションズリーグで倒してるデンマークが来る可能性がけっこうあるんですね。もう先のことを考えるのはやめましょう。人生は何が起こるかわからないので、タコスのこととか考えましょう。

 さて、名鑑では色々気になるプチ情報が載っています。監督のヘラルド・マルティーノの「愛称は『タタ( お父さん)』だが、由来は不明」とかのなんじゃそりゃ系もあれば、ケビン・アルバレスの「7歳の時に父親を落雷で亡くしており」というかなり深刻な話もあり、フェルナンド・ベルトランの「好きなヒーローはアイアンマン」というすごくどうでもいい情報もあってかなり濃厚でした。他にも面白情報満載なので、名鑑を買いましょう(宣伝の時間です)。ちなみにメキシコ代表にはビタイチ関係ありませんが、メキシコの麻薬地帯シナロア州クリアカンのサッカーチームの監督をディエゴ・マラドーナが務めた際の顛末を記録したドキュメンタリー『マラドーナ・イン・メキシコ』はかなり面白いので、みなさんNetflixで見てください(これは特に宣伝ではありません)。

○ポーランド

 名鑑にここまで悲観的なことが書かれているケースもなかなか珍しいのではないでしょうか。「新体制で定まらない戦術」「チームの完成度はお世辞にも高いとは言えない」「攻守における課題が解決されてない」などなど、チーム紹介の冒頭から夢も希望もないような言葉が躍っています。

 その後の戦術紹介においても、「高い位置からのプレッシングを試みたが、中盤や最終ラインに効果的な連動が見られず」「マークの受け渡しはルーズな場面が目立ち」「レバンドフスキの存在が最大の強みながら、そのクオリティを存分に発揮できる環境は整えられていない」「豪華な陣容を誇る攻撃陣が宝の持ち腐れ」と、良いところがほとんどありません。頭を抱えたくなるような末世的内容に、私が読んでいるのはW杯名鑑なのか19世紀ロシア文学なのかわからなくなったほどです。いつ金貸しの老婆を正義のために殺めてしまうのかちょっとドキドキしました。

 ただですね、そう言いたくなることもわかるんですよね。前回W杯でも1勝2敗、昨年のEUROでもレバンドフスキが3点叩き込んだこと以外はかなり乏しい内容でした。今年の1月に就任したミフニエビチ新監督は色々試しながらもあんまりうまくいっていないようです。世界最強ストライカーのレバンドフスキ、能力の高いミリク、ジエリンスキなどの豊富な前線を抱えながら、そもそもそこまでボールが行かないというジレンマには忸怩たる思いがあるのもわかります。このままでは、煮詰まり過ぎて「そうだ![4-4-3]のフォーメーションで行こう!」と画期的アイデアを生み出してしまうかもしれません。そうならないためにも、ここは東ヨーロッパの科学力でレバンドフスキを量産すればなんとかなるんじゃないでしょうか。10人レバンドフスキを並べたチームが強いのかどうかというとそこはちょっとよくわからないのですが、見てみたい気持ちがあります。ともかく、現実的には、GKのシュチェスニーがどれだけ止められるかが勝負というシュチェスニー大感謝祭になりそうな感じがします。

○サウジアラビア

 アジア最終予選で同じ組だったし、他のアジアの大会や予選でもしょっちゅう顔を合わせているので、実家の親より会っている回数が多い気がする、そんな人もいるんじゃないでしょうか。馴染みの居酒屋のような安心感のあるサウジアラビアです。

 もうずっとアジアの強豪ですが、94年にベスト16に進出して以来、グループステージは突破できていませんので、久々に結果を出したいところ。しかし、なかなか厳しいグループに入ってしまいました。アルゼンチンはともかくとして、メキシコもしくはポーランドのどちらか(あるいは両方)を食わなければいけません。日本戦を見ている限り、ボールを保持してプレスをかわすことはけっこう得意なようなので、そこでなんとか時間とチャンスを作り、前線のS.アル・ドサリや日本戦で得点を決めたアル・ブライカンのアタッキング能力に賭けることになるでしょう。チャンスはあまり多くないですが、まったくのゼロという感じでもありませんので、頑張っていただきたいです。

 さて、サウジアラビアの最大の注目点と言えば、「ミスター・ダンディー」のイケオジであるルナール監督です。名鑑の紹介でも「試合中は必要以上に中継カメラに抜かれる」とある通り、心なしかアジア最終予選でもカメラに映る可能性が中国の李鉄監督よりも多かった気がします(※使用者の感想です)。ルナール監督の方でもカメラをかなり意識している感じがあり、暑い試合ではシャツのボタンを「いくらなんでもそれは開けすぎじゃないか」というところまで開けて限界にチャレンジしている姿が印象的でした。本大会は酷暑のカタールということもあり、ルナール監督のボタンがどこまで開くのか、あるいはもはやシャツなんて脱ぎ捨ててしまうのか、それとも下まで……カタールの熱い夜から目が離せませんね!

グループD

……

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Profile

tkq

世界ロングボール学会(WLBS)日本支部正会員。Jリーグの始まりとともに自我が芽生え、カントナキックとファウラーの薬物吸引パフォーマンスに魅了されて海外サッカーも見るように。たぶん前世でものすごく悪いことをしたので(魔女を10人くらい教会に引き渡したとか)、応援しているチームがJ2に約10年間幽閉されています。一晩パブで飲み明かした酔っ払いが明け方にレシートの裏に書いた詩のような文章を生み出そうと日々努力中です。【note】https://note.mu/tkq

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