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ローマの買収、ついに決定。コロナ禍による財政悪化が決定打に

2020.08.07

 ローマは8月6日、アメリカの資本家ダン・フリードキン氏率いる資本家グループと経営譲渡契約を締結したことを正式に発表した。買収金額は合計で5億9100万ユーロ(約740億円)。フリードキン は86.6%の株式を取得し、株式公開買付けによって約13.4%の浮動株を8月31日までに取得することで買収が完了する。

 現オーナーのジェームズ・パロッタ会長との交渉が5日夜までに締結し、その後イタリアの金融監督当局である国家証券委員会(CONSOB)の承認を得て、正式発表された。

コロナ禍で売却を決断

 アメリカにおけるトヨタの5大販売網の一つ『ガルフ・ステーツ・トヨタ(GST)』のチェアマンであるフリードキン氏がローマの買収に乗り出したのは昨年11月。ローマのスタジアムの建設計画が進まない中、赤字経営にも悩まされたパロッタ会長も交渉に応じたが、その途中で世界的な新型コロナウイルス感染症拡大が発生し、ブレーキがかかった

 フリードキン側はオファーを提示するも、パロッタ会長の希望額から低いことを理由に何度か難色を示され、「フリードキンは失望し、獲得交渉の撤退すら検討している」などと地元紙で報道されるほどに進展が危ぶまれた。

 しかしその間にローマの経営状況が悪化し、3月31日の決算では赤字額が約1億2640万ユーロに達した。さらにはコロナ禍の影響も重なり、パロッタ会長はクラブの資金繰りに苦慮をする事態に陥った。

 買収を受け入れる以外に道がなくなったパロッタ会長は新たな買い手を模索するが、カタールの資本家ファハド・アル・バケール氏には期日までにオファー提示を断念。そして最終的に、フリードキンのオファーを受託することになった。

買収による資本安定に期待

 当座の危機をしのぐ上では間違いなく最善策であり、運転資金のための資本増強として1億ユーロがただちに投下されることになるという。また、給与などの支払いのために、パロッタ会長が12月31日までを期限に設定した臨時の資本増加も引き継ぐ格好となる。何より資本が安定することで、ロレンツォ・ペッレグリーニやニコロ・ザニオーロといった若手の主力選手の放出も避けられる見通しとなった。

 アメリカからはダン・フリードキン氏の実子ライアン氏がローマを来訪し、インテルのスティーブン・チャン会長同様、オーナーの息子としてクラブの会長職に就任すると見られている。

 フリードキン氏は「我われフリードキン ・グループは、ローマの街とそのアイコンであるクラブに経営参加するための重要な一歩を記した。早期に買収手続きを完了してローマの街に入る日を楽しみにしている」とコメント。また8年間の会長職の後にクラブを手放すこととなったパロッタ会長は「将来、ローマの偉大なオーナーとなってくれるだろう」とフリードリン氏に期待を寄せた。

 8月6日のUEFAヨーロッパリーグ、セビージャ戦を控え、ドゥイスブルクで経営譲渡の一報を聞いたFWエディン・ジェコはこの件について尋ねられ、「モチベーションが変わる? 自分たちはモチベーションを高めた状態でここにきている。他のことは別の人間が考える」と地元メディアに語って試合に臨んだが、ローマは0-2で敗れている。


Photo: Getty Images

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神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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