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ローマの株が突如、急騰。米投資家が資金提供か?

2019.11.24

 11月20日、イタリア証券取引所に上場しているローマの株が急騰した。前日の終値の0.505ユーロから半日で0.562ユーロに達し、11.29%の上げ幅を記録。一時期は12.87%にまで達したため、証券取引所は売買停止を命じるに至った。

アメリカの富豪がローマに出資?

 株価急騰の理由はその日、こんな情報が出回ったためだ。「パロッタは1億5000万ユーロの共同出資者を得る。それはトヨタのUSAの王、フリードキンだ」。2020年12月31日までを期限とする1億5000万ユーロの資本増強に、アメリカにおけるトヨタの5大販売網の一つ『ガルフ・ステーツ・トヨタ(GST)』のチェアマンであるダン・フリードキン氏が参入するというのだ。同日、ローマはイタリア証券取引委員会からの指導を受け、正確な情報を公開。「現在投資家と予備協議を開始し、ASローマに対する投資の可能性について検討していただいている」と報道内容を認めた。

 フリードキン氏はカリフォルニア出身の54歳。テキサス、アーカンソー、ルイジアナ、ミシシッピ、オクラホマ各州に散らばる154のディーラーを統括し、米国におけるトヨタ車の13%を販売する『GST』を経営する。個人資産は42億ドル、米経済誌『フォーブス』の番付では全世界504位の資産家だ。先代から引き継いだ『GST』の他、持ち株会社を通じてホテル経営や映画制作などの事業拡大も行っており、失敗はしたがNBAヒューストン・ロケッツの買収にも動いていた。ローマのジェームス・パロッタ会長は資本参入者を求め、米金融企業グループ『ゴールドマン・サックス』に探してもらっていたと言われている。

明るい未来を期待する報道も

 『コリエレ・デッロ・スポルト』によれば、フリードキン氏は使節団をローマに送り、資本増強金のうち85%程度に相当する1億3000万ユーロを出したいと伝えたという。小口の株主として参入するかどうか、12月31日までに決める意向だと報じられているが、注目はその意味するところだ。「資本参入を足がかりに、最終的にはクラブの買収へと動く」。イタリアのメディアはそう見ている。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「フリードキンはローマの評価額を6億ユーロと見積もっている。スタジアム建築計画を進められずデ・ロッシの退団ののち家族も厳しい非難にあったパロッタ会長も、クラブの経営権を譲渡したいと思っている」と報じた。

 地元メディアの間では、早くも希望的な観測が湧いている。「トヨタはイタリアオリンピック協会と2024年までパートナーシップ契約を結んでいるから、フリードキンとの関係もうまく繋いでくれるはず(注:パートナーシップを結んだのはトヨタの現地法人で、『GST』とは別企業体)」「これで収入を増し、選手の放出を避けることも可能」「フリードキンが会長になればトッティやデ・ロッシも戻ってくるはず」など、気前の良いことを書き立てたところもあった。一筋縄ではいかないローマの環境に新資本家は参入するのか、そして改革はできるのか。注視が必要である。


Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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