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サンタカタリーナ州選手権の再開と再中断、コロナとの共存の行方は

2020.07.16

 7月8日、サンタカタリーナ州選手権が114日ぶりに再開され、準々決勝1回戦が行われた。しかしその4日後、7月12日に予定されていた2回戦を前に、大会は再び中断された。

 出場する8チームが試合前の新型コロナ感染テストを行ったところ、合計24人の選手と技術委員会スタッフが陽性という衝撃的な結果が出たからだ。

アットホームなシャペコエンセ

 8チームのうちの1つ、シャペコエンセは5月27日に練習を再開していた。その際、キャプテンのアラン・ルシェウは「自分を含む選手たちが、中断の間も良好なフィジカルコンディションを維持できたことを誇りに思う」と語っていた。

 アランは2016年、チームのコロンビア遠征で航空機が墜落し、71人が亡くなるという大きな悲劇が起きた際、わずか6人だった生存者のうちの1人だ。生還した3人の選手の中で、最終的に彼だけがプレーに戻ることができた。

2016年の飛行機事故から生還し、現在はキャプテンを務めるアラン・ルシェウ(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 墜落で負った大ケガから復帰し、レギュラーの座を取り戻したほどの強靱な精神力と、30歳の年齢に見合う経験もあり、今季はキャプテンを務めている。

 試合再開にあたっては「満場のスタジアムでは、サポーターが選手を前へ前へと押し出してくれる。無観客試合であればその分、選手たちの精神力が必要とされるんだ。チームメイトたちにも『とにかく集中を切らしてはいけない』と強調している」と語っていた。

 シャペコエンセのホームゲームは、赤ちゃんや幼児を含む家族連れが安心して応援に行ける雰囲気が特徴だ。そして、航空機墜落で亡くなった71人へのオマージュとして、毎試合71分になると、サポーターが「バモ・バモ・シャペ」と大合唱する。その歌声や子供たちの歓声のないスタジアムで、チームはアバイーに2-0の勝利を挙げた。

シャペコエンセのスタジアムは、女性や子供も含め家族で安全に観戦できる雰囲気が魅力(Photos: Kiyomi Fujiwara)

検査で合計24人が陽性反応

 ところが、そのシャペコエンセが再開2試合目の前に行った新型コロナ検査で、選手と技術委員会スタッフ、合わせて14人から陽性の結果が出てしまった。クラブとしては、練習再開前から数えて6度目のテストだった。

準々決勝1回戦のアバイー戦で2-0の勝利を挙げたが…(Photo: Márcio Cunha/ACF)

 陽性者の1人、FWホベルトは、咳と呼吸困難で入院し、重症とはみなされていないものの、酸素吸入器による治療を受けている。

 さらに、準々決勝進出8チームのうち、他にも4チームから選手やスタッフの感染が発覚し、5チーム合わせて24人が陽性という結果になった。州政府はサンタカタリーナ州選手権の2週間の再中断を決定。また、陽性の当事者はもちろん、濃厚接触者全員に14日間の自宅隔離を指示した。実質、練習も不可能となった。

 シャペコエンセのチームドクターであるファビアーノ医師は、コンディションの面を考え、陰性の選手だけでも練習に戻ることを要望するために、クラブ7度目の感染検査を実施。ホームスタジアムとトレーニングセンターの全面的な消毒も、再度、徹底的に実施した。

 さらに全クラブと州政府は、オンライン会議で感染予防のガイドラインを見直すとともに、その厳守を確認し合い、7月15日からの練習再開が認められた。

 クラブ側は8月第2土曜日に予定されている全国選手権開幕までに終えられるよう、州選手権の中断期間を短縮することも要請しているが、それは州衛生局の判断待ちとなっている。

スタジアム内は本当に安全か

 ブラジルでは各州が外出規制やロックダウンを始めてから間もなく4カ月が経過する。地域によって段階的解除を進めたり、感染者増加によって再び規制を強めたりと、苦慮しながらの対応が続いている。

 サッカーも中断から4カ月。経済的な問題もある中、各クラブの懸命な努力が続けられている。州選手権としては、サンタカタリーナ州の他にも、リオデジャネイロ州が6月18日に、セアラー州が7月13日に再開した。サンパウロ州とリオグランデ・ド・スル州は、7月22日再開を予定している。

 サッカー界には、優れた医療チームと資金を投入しての感染予防ガイドライン厳守により「トレーニングセンター内や無観客試合のスタジアム内は外よりも安全」という意見がある。しかし、これだけの感染者が出ると「外よりも安全」と言い切れるのかどうか。

 早期再開を巡って、賛成・反対のクラブに分かれて大論争となったリオ州選手権では、いくつかのクラブで1人、2人と陽性が確認され、隔離される選手が出たことにより、「その前日まで一緒に練習していた選手たちは安全だったと言えるのか」と議論された。ただし、それも最初の頃だけで、その後は当然のように、当事者の隔離のみで解決されている。

 日本でも使われている「コロナとの共存」「新たな日常」という言葉が、ブラジルでも聞かれるようになった。本当に共存できるのか、ウイルスに対しても、経済的にも、戦いはまだ長く続きそうだ。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Márcio Cunha/ACF, Getty Images

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シャペコエンセ新型コロナウイルス

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。