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『Microsoft』社にも講演する“14歳”の元プレミアリーガーとは?

2020.07.03

 引退後の方が稼げる選手は数少ない。高給取りで知られる元プレミアリーガーともなればなおさらだ。だが、稀にフットボールとは違う道に進んで成功を収める者がいる。ポール・マクベイ(42歳)もそんな1人だ。

引退後にスポーツ心理学を学ぶ

 1990年代にトッテナムでキャリアをスタートさせたマクベイは、2000年にノリッジに移籍してから本格的に才能を開花させた。北アイルランド代表に選ばれて20キャップを獲得し、1シーズンではあるがプレミアの舞台にも立った。しかし、彼がファンから愛された真の理由は、チームをプレミアに昇格させたことより、彼の身長にあった。

 168cmの同選手は、大柄な選手に囲まれるとひと際小さく見えたのだ。そのためノリッジのファンは、フランキー・ヴァリの『君の瞳に恋してる』のメロディーに乗せて「愛しているぜ、ポール・マクベイ。例え背が低くても♪」と愛着を持って歌ったのだ。

 そのマクベイが、スパイクを脱いだ後も活躍している。英紙『Daily Mirror』によると、今は45分間のスピーチで現役時代の週給よりも稼ぐそうだ。

 マクベイは2010年に32歳で引退すると、解説業に乗り出すのではなく、スポーツ心理学の道に進んだ。体の小さかった彼は、現役時代から人一倍考えることで他の選手と渡り合ってきた。「私は190cmにはなれないし、急にメッシになることもできない。でも、メンタル面は大幅に変えることができたんだ」と過去のインタビューで語ったことがある。

 そういった経験を生かし、ノリッジのスポーツ心理学者とともに『ThinkPRO』という会社を立ち上げ、クラブの下部組織をサポートするようになった。その後はクリスタルパレスにも協力するようになり、今では世界的な企業から講演の依頼が届くまでになった。

「考え方次第で人は変われる」

 厳しいプロの世界で培った経験が、ビジネス界や一般社会にも応用できると彼は説く。

 「プロサッカー界は世界一過酷かもしれない。ほんの一握りの人間しか成功できない。だから、その経験をビジネス界に応用できると思う。大半の企業は精神的パフォーマンスを軽視しているからね」

 今年は日本やアジア諸国でも講演会を開く予定だったが、残念ながらコロナ禍のせいで断念することに。それでも5月には、あの『Microsoft』社のオセアニア職員を対象にオンラインでセミナーを行ったという。「Microsoft社の講演は、10年間の努力が報われた気がした」とマクベイ。

 背が低くて子供に見られることもある彼にとって、“元プレミアリーガー”のステータスは必ずしも説得力があるわけではないが、関心を引くきっかけにはなるという。

 「選手キャリアのおかげ、とまでは言えない。今でも壇上に立てば『あの14歳は誰だ?』と思われるからね! でも、プレミアリーグは世界的ブランドだ。クリスティアーノ・ロナウドやティエリ・アンリと対峙している写真を見せれば『コイツは只者ではない』と思ってもらえる」

 実際にYouTubeにアップされている数年前の講演会を確認すると、そんなやり取りが映っていた。壇上のスクリーンに「Paul McVeigh-Whoo」という自己紹介の名前を映し出し、いつも「Who(誰)?」って言われるので「最初から名前に付けておいたよ!」と冗談で場の空気を和ませる。

 その後でロナウドと一緒に写っている2004年当時の写真を見せて「酷い髪型だけど、これが誰だか分かる?」と問いかけるのだ。そして「当時のロナウドは世界最高の選手だったか?」と投げかけた後「そうではなかった」と解説する。「彼は才能こそあったが、最初から凄かったわけではない」

 こうやってロナウドを例に出し、自身のエピソードを交えながら「考え方次第で人は変われる」と力説する。確かに彼は背が低かったおかげで「考える」という才能を授かった。そして、考え続けたことで“大物”の講演家にまで上り詰めることができたのだ。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。