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ウイルス感染者が激増する中、プロサッカーの無期限延期が決定

2020.03.25

  3月23日、スペインサッカー連盟とラ・リーガが連名で「プロサッカーはスペイン政府が許可するまで無期限で延期する」という声明を発表した。

 連盟のルビアレス会長、ラ・リーガのテバス会長というトップ同士が敵対する両機関から共同声明が出されるのは極めて異例で、それ自体が事態の深刻さを表していると言える。

国内の感染者数は爆発的に増加

 3月23日時点でのスペイン国内の感染者数は約3万3000人。この24時間での感染者の増加数は4517人とこれまでで2番目の多さで、死者は462人増で最多と、16日に出された原則的な外出禁止策を柱とする非常事態宣言の効果はまだ出ていない。

 この項でスペイン本土でのコロナウイルス関連のニュースを送るのは5回目だが、それぞれ執筆当時の感染者数の推移を見れば、1回目が2月28日で25人、2回目は3月5日で237人、3回目は10日で1200人超、4回目は17日で1万1178人、そして今回が3万3089人と、爆発的に増えていることがわかる。

 現在、スペイン全土では教育施設も商店も飲食店も娯楽施設もすべて閉まっており、医療、通信、スーパー、銀行などごく一部が開いているだけ。経済への打撃は計り知れないが、感染を食い止めるには外出禁止、移動禁止で人の流れを強制的に止めるしかない。

 3月22日には今後15日間、4月11日までの非常事態宣言の延長が決まったばかりだ。サッカーなどやっている場合ではない、というのは誰でもわかる。翌23日のリーガ無期限延期の発表は、そんな現実を追認したに過ぎない。

5月中のシーズン再開は厳しい

 前回の記事でEURO2020の延期、UEFAチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ各決勝の延期をお知らせしたが、これを受けてルビアレス会長は5月上旬のリーガ再開、6月末シーズン終了の可能性を示した。その数日後、テバス会長は5月中旬再開、7月中旬終了のカレンダーを提示した。

 リーガの残りは11節。両者ともミッドウィークにも試合(無観客を含む)をする強行日程で、1カ月半の間にシーズンを終わらせるという算段だった。

 だが、再開前に“プレシーズン”の期間をいつ、どのくらい取るのかは考慮されないまま。仮に大急ぎで2週間だけ設けるとしても、日程に余裕のあるテバス説の場合でも5月末には選手を招集できる環境が出来上がっていないといけない。つまり、練習をしても感染の危険がない状況になっていないといけないのだ。

 スペイン政府の観測では、感染者数増加のピークは今週から来週にかけて。ただ、増加スピードに歯止めがかかることは収束でも何でもなく、数万人の感染者を抱えている状態は変わらないまま。

 4月中に数万人の感染者がいて、その1カ月半後に練習再開できるかだろうか。日々のニュースで悲惨な現場を見せられている私の目からすれば、かなり厳しいと言わざるを得ない。


Photo: Getty Images

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コロナウイルススペインラ・リーガ延期

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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