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リーガの無観客開催がついに決定。コロナウイルス流行拡大は不可避か

2020.03.11

 恐れていたが、予測された事態がついに訪れた。3月10日、新型コロナウイルス流行拡大の影響により、スペイン政府がすべてのプロ・アマスポーツの国内・国外での試合を無観客で開催するように要請した。

 そしてこの要請に対し、サッカー連盟とラ・リーガは公式声明を出し、政府の要請を受け入れて無観客で試合を行うことを発表した。

ジャーナリストも取材禁止に

 水際作戦(外国からのウイルス侵入を食い止める)のフェイズ1「抑制」では感染を食い止められないことは、すでに明らかになっていた。

 3月9日の1日だけで600人以上の感染が明らかになり、感染者数が1200人を超えたことを受けて、政府は「国内にコントロールできない感染」があることを初めて認め、マドリッドとバスク地方の一部での全校一斉休校を決めていた。政府はこの時点で、感染防止に向けて「強制力のある措置を採用する」という方針へ方向転換していたわけだ。

 政府からの要請により、前回の記事執筆時点にあった「無観客にすべきか否か」という議論は終了。プロサッカーで言えばUEFAチャンピオンズリーグもヨーロッパリーグもリーガも一律で、とりあえず2週間は無観客で開催することが決定した。

 今週末にはセビージャ最大のサッカーの祭典であるセビージャvsベティスが行われ、私も取材する予定だったが、無観客の対象にはジャーナリスト(テレビ中継スタッフを除く)も含まれるので、テレビ観戦を余儀なくされることになった。

繰り返されるちぐはぐな光景

 振り返れば、ウイルス拡散スピードと同様、無観客試合の恐れが現実になるまであっという間だった。

 3月6日のアラベスvsバレンシアでは、試合前のセレモニーでの握手と抱擁が禁止され、肘をぶつけ合うという新たな挨拶法が披露された。しかし、ペナルティエリア内ではシャツを引っ張り合うし、得点シーンでは抱き合って祝うし、という、ちぐはぐでコミカルな光景も繰り広げられた。

 また、3月8日のベティスvsレアル・マドリーを取材した私は、帰宅の際にベティスの勝利に興奮し、熱気むんむん満員すし詰め状態のバスの中で「『スタジアムはオープンエアで感染の可能性が低い』という主張は、行き帰りの公共交通機関がこれでは意味をなさないな」と実感した矢先だった。

 無観客試合の期間はとりあえず2週間だが、この間に感染激増が収まる可能性は、これまでの推移を見る限り、低いと言わざるを得ない。シーズン大詰め、リーガとコパ・デルレイのタイトル、欧州カップ戦出場権争い、残留争いにも大きな影響を与えることは避けられないが、今はいかにして拡大を食い止めるかが最優先だ。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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