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早くも独走体制のクルブ・ブルッヘ。ベルギーの覇権を完全掌握へ

2019.12.21

 ベルギーリーグのレギュラーシーズンは半分が終わり、第19節終了時点でクルブ・ブルッヘが、消化試合数が1試合少ないながら2位ロイヤル・アントワープに勝ち点8差をつけて首位を独走している。低迷するヘンクやアンデルレヒト、浮き沈みが激しいスタンダール・リエージュやヘントとは異なり、中世期に湾岸都市として繁栄した「ベルギーの水の都」ブルッヘに本拠を構えるクラブが、今のベルギーの覇権を握っていると言えるだろう。

優勝監督クレマンの電撃復帰

 昨シーズンは中盤戦のつまずきが響き、第9節でヘンクに首位を明け渡してから一度も返り咲くことができずに連覇を逃した。シーズン終了後にクロアチア人のイバン・レコ監督が退任し、オランダ代表FWダンジュマ(→ボーンマス)、ブラジル人FWウェズレイ(→アストンビラ)、DFデンスウィル(→ボローニャ)など、主力選手を放出した。

 新監督には、2018-19シーズンにヘンクを9シーズンぶりの優勝に導いたフィリップ・クレマンが就任した。ワースラント・ベフェレンでは森岡亮太を、ヘンクでは伊東純也を指導しているクレマンは、現役時代にクルブ・ブルッヘで10年間、センターバックやアンカーとしてプレーしてきた守備の要で、2度の優勝に貢献し、現役引退後は下部組織の指導者やアシスタントコーチとして下積みした、まさにクルブ・ブルッヘのレジェンドだ。しかし、ヘンクを優勝に導いたタイミングでの“復帰”は、ベルギー国内ではサプライズだった。

 今夏はリバプールからベルギー代表GKシモン・ミニョレを獲得したのを始め、昨シーズンは2部のユニオン・サン・ジロワズでプレーしてリーグMVPに輝いた南アフリカ代表FWパーシー・タウ、イタリア・セリエBのスペツィアで11得点を挙げたナイジェリア人FWデビッド・オケレケ、スラビア・プラハからコートジボワール代表DFシモン・デリなど獲得し、戦力の刷新を図った。

ベルナベウでドローに持ち込む

 UEFAチャンピオンズリーグでは、予選3回戦でディナモ・キエフに4-3、プレーオフでLASKリンツに3-1で競り勝ち、ベルギーのクラブとして初めて国内リーグ上位チーム予選を突破。本戦ではパリ・サンジェルマン、レアル・マドリー、ガラタサライと同組になった。

 3年連続でのCL出場となったものの0勝3分3敗と勝利を挙げられなかったが、グループ3位でUEFAヨーロッパリーグの決勝トーナメントに進むことになった。

 第2節ではアウェイのサンティアゴ・ベルナベウでR・マドリーと対戦。R・マドリー優勢という予想の中、クルブ・ブルッヘは9分、ナイジェリア人FWエマニュエル・デニスのゴールで先制すると、39分にも再びデニスがゴール。後半に巻き返されて2-2のドロー決着となったが、結果的にはこの時に獲得した1ポイントが4位ガラタサライとの間で明暗を分けた。ちなみに、ELの決勝トーナメントではマンチェスター・ユナイテッドとの対戦が決まっている。

圧倒的な攻撃力で首位を独走

 国内リーグでは14勝3分1敗、リーグ最高の41得点、最小の7失点と圧倒的な成績を残している。監督が交代し、レギュラーの半数が入れ替わったにもかかわらず、抜群の安定感で2位以下を引き離している。

 [3-1-4-2]をベースとしていた昨シーズンと異なり、今シーズンはほとんどの試合を[4-2-3-1]で戦っている。ウイングバックまでFW登録の選手を起用していた昨シーズンは“6トップ”とも形容できる布陣で分厚く攻めるスタイルを採っていたが、今シーズンは3トップや中盤が臨機応変にポジションを変えながら、相手の守備陣をかき乱す戦術を採っている。クレマン監督がヘンクで使っていた戦術を持ち帰ったと言えるだろう。2年連続リーグMVPのベルギー代表MFハンス・バナーケンはチームトップの9得点、キャプテンのオランダ代表MFルート・フォルメルはアシスト数リーグトップの11と健在だ。

 前監督からウイングバックで起用されていたデニスはCFで起用されるようになり、R・マドリー戦での2得点によって価値を高めている一方、昨シーズンは2トップの一角を担っていたU-21ベルギー代表FWシーベ・スフライフェルスは出場機会を失っており、攻撃陣は監督交代で明暗が分かれている。

 守備陣はミニョレの獲得が非常に大きく、これまでクリーンシート数は11試合と他を寄せ付けていない。ここ数年のクルブ・ブルッヘは、ロシア代表GKガブロフ、クロアチア代表GKレティツァらがゴールマウスを守っていたが、度重なるミスによるGKの序列交代が相次いでいた。最終ラインに新加入選手が多い今、ミニョレの安定感は非常に大きい。

 12月19日のベルギーカップではアンデルレヒトに2-0で勝利し、準決勝進出を果たしている。リーグで10位と混迷を極める宿命のライバルを尻目に、ここ5年間のレギュラーシーズンを常に2位以上で終えているクルブ・ブルッヘが覇権を握りつつあると言えるだろう。


Photo: Getty Images

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クルブ・ブルッヘ

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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