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クルゼイロが喫した「2つの敗戦」。来シーズンはいばらの道か

2019.12.20

 2019年のブラジル全国選手権は12月8日に全日程を終了し、国内サッカーに関するメディアの話題は移籍情報に移っている。そんな中、連日不穏なニュースが続いているのがクルゼイロだ。

クラブ史上初の2部降格

 クルゼイロは今シーズン、99年のクラブ史において初めて2部降格が決まった。最後の望みをかけた本拠地ミネイロンでの最終節では、パルメイラスに0-2で敗戦濃厚となった段階で、降格が免れないと感じた一部サポーターがスタンドで暴徒化。多くの椅子を壊してはピッチに向かって投げ入れ始めた。

 警備にあたっていた軍警察が子供連れや女性を中心とした周囲の観客を誘導し、避難させる状況の中、安全が確保できないと判断した審判団は、86分の段階で試合終了のホイッスルを吹いた。クルゼイロが「ピッチの中と外で2つの敗戦をした」と言われる理由だ。

 クルゼイロは今年、上半期こそ南米最高峰を決めるコパ・リベルタドーレスでグループステージを首位突破するなど健闘していたが、下半期に入るとコパ・リベルタドーレスのラウンド16敗退や全国選手権での不振と平行し、ピッチ外での話題も目立つようになっていった。

 大きな問題の1つが選手への給料遅配だ。その理由としては、クラブが創立100周年を前にビッグタイトルを狙って身の丈に合わない大型補強を続けたこと、スポンサーの減少、首脳陣の高額過ぎる給料、スタッフ過多などが挙げられており、テレビ放映権のシステムの変更も大きな影響を与えたと言われている。

 昨年までは、各クラブがホームゲームの中継を望むテレビ局と個々に交渉していたのだが、今年は『グローボ』という1つのテレビ局が、まず放映権総額の40%を全20チームに平等に支払い、次に30%を中継試合数に応じて、また残り30%を最終順位に応じて支払う、というシステムになり、これもクルゼイロには大きく響いた。

給料遅配に加え様々な問題が噴出

 残念ながら、ブラジルではビッグクラブでも給料遅配のニュースは珍しくない。クルゼイロでの給料遅配が大きな話題となったきっかけに、チアゴ・ネビスのメッセージ流出がある。かつてベガルタ仙台でもプレーした彼は、屈指のスターとして2017年からクルゼイロでプレーし、チームのリーダー的な立場にあった。そのチアゴが、9月以降に滞り始めた選手への給料に関して、クラブのサッカーダイレクターに「難しいのは分かっているけど、少なくとも給料の60%、何とかならないか? 僕らにとってのモチベーションにもなる」と、直談判のボイス・メッセージを送ったのだ。しかも「勝利給なんて必要ない。勝つのは僕らの義務なんだから」とまで言っている。

 しかし不幸なことに、チアゴはその直後の試合でPKを失敗してしまった。試合後にボイス・メッセージがメディアに流出すると、ダイレクターはまるで「チアゴはPKを失敗しておきながら給料だけは要求する」と言わんばかりの熱弁を振るった。そのため、敗戦に憤慨したサポーターからは「給料遅配への仕返しとしてわざとPKを外したのではないか」という声まで出てきた。正当なはずのチアゴの要求は、チームの不振やクラブ内の問題の“スケープゴード”として使われたも同然の状況になってしまった。

 シーズンオフに入った現在、クルゼイロについてはここまでの給料遅配に加え、2部降格による収入激減に備えた選手の放出などが話題となっている。それに平行して首脳陣の大幅な入れ替え、税金の未納、経営に関する書類の紛失やマネーロンダリングの疑いによる捜査など、舞台裏の不穏なニュースも続く。

 来シーズン指揮を執るのは、かつてクルゼイロでプレーし、監督を務めたこともあるアジウソン・バチスタだ。日本でも選手、監督の両方でジュビロ磐田に在籍し、親しみのある存在だけに、健闘を祈りたい。


Photo: Getty Images

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。