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新監督への懐疑論が早くも…ベルギー王者ヘンクの苦難

2019.09.25

8季ぶりCLで屈辱の大敗

 昨シーズン、ベルギーリーグ優勝に沸いたヘンク。しかし、今シーズンの彼らはまるで別のチームになったかのように苦戦が続いている。

 8シーズンぶりに参戦したUCLのGS第1節ザルツブルク戦では、前半だけで5点を奪われ6-2で大敗を喫した。前半早々、ザルツブルクに中央を突破され19歳のノルウェー代表FWアーリング・ブラント・ホーランに先制点を食らうと、34分から前半終了までの12分間で立て続けに4失点。後半だけを見れば1-1と持ち直したが、厳しい結果に終わった。

 ベルギーメディア『sporza』は「ザルツブルクはUCLでヘンクに強烈なレッスンを行った」と報じた。前半61%のポゼッションを記録したヘンクだが、走行距離ではザルツブルクが7kmも上回っており、ヘンクのポゼッションがザルツブルクの鋭いカウンターとダイレクトプレーの前では無力だったと酷評。両CBセバスティアン・デバースト、ヨン・ルクミは集中力の欠如からミスを重ね、22歳の若手GKガエタン・クッケの好守がなければ10失点はしていただろうと、アナリストのステフ・ワイナンツは発言している。

昨季と違う伊東純也の役割。新監督の試行錯誤

  昨シーズンは国内屈指の得点力を原動力に4度目の優勝を果たしたヘンクだが、国内リーグでも8試合で4勝1分3敗。暫定7位に沈んでいる。

 優勝監督のフィリップ・クレマンがライバルであるクラブ・ブルージュの監督に就任するとともに、ベルギー代表FWレアンドロ・トロサール(→ブライトン)、ウクライナ代表MFルスラン・マリノフスキ(→アタランタ)がそれぞれ移籍。新監督にはシャルルロワを6シーズン率い3度プレーオフ1へ導いているフェリーチェ・マッズを招へいし、トロサールとマリノフスキーに代わる新戦力として昨シーズン14得点14アシストのFWテオ・ボンゴンダ(←ズルテ・ワレヘム)、ルーマニアの新鋭MFヤニス・ハジらを迎えた。

  イタリア系二世のフェリーチェ・マッズ監督は、2017年にベルギー紙『ヘット・ラーステ・ニュース』が主催するベルギー最優秀監督賞「レイモン・ゲタルス・アワード」を受賞している。選手としてのプロ経験はなく、地元で体育教師を務めながら下部リーグで監督業に従事していたが、2010年に当時率いた3部のロイヤル・ホワイト・ウォルウェをベルギーカップでベスト8に導いたことが評価され、自身がユース時代にプレーしたシャルルロワに監督として“復帰”。ロングカウンターを武器とした組織力と多彩な引き出しで地元クラブの台頭を支え、53歳にしてビッグクラブへのステップアップを遂げた。

ヘンクのフェリーチェ・マッズ監督

 シーズン開幕前のベルギースーパーカップではメヘレンに3-0で勝利。期待感は高まっていた。開幕戦でもコルトライクを2-1で下し白星発進。しかし、第2節のメヘレンに3-1でリベンジを食らうと、続く第3節でズルテ・ワレヘムにも敗れ2連敗と開幕ダッシュに失敗した。

 不振の原因の一つは負傷者の多さ。トロサールの後継者として獲得されたFWボンゴンダは背中の負傷により出遅れ、守備の要であるオーストラリア代表GKダニー・ブコビッチは練習中にアキレス腱断裂の大ケガを負ってシーズンの半分を棒に振ることになってしまった。

 また、 ベルギーリーグ屈指のボールプレーヤーで、ヘンクの攻撃のタクトを振るっていたトロサールとマリノフスキの後釜として期待されるルーマニア代表MFヤニス・ハジをはじめスウェーデン代表MFベンヤミン・ニグレンら、期待の若手がチームにフィットできていない。

 マッズは右ウイングの伊東純也に、従来のタッチライン際ではなくゴールに近いインサイドでのプレーを要求。昨シーズンはダイナミックな飛び出しで貴重なゴールも挙げたセントラルMFのブライアン・ヘイネンにはパサーとしての役割を求めるなどして昨シーズンの型からの改良を試みているが、リーグ7位の13得点と攻撃力には陰りが見えている。そうした試行錯誤の影響もあってか、昨シーズンのプレーオフ1で猛威を振るった伊東純也とデンマーク代表DFヨアキム・メーレとの右サイドのコンビネーションは鳴りを潜めている。

 ザルツブルク戦の惨敗で、新監督マッズへの懐疑論がささやかれているが、スポーツディレクターのディミトリ・デ・コンデは「解任はまったく考えていない。今はフェリーチェを支える時だ」と解任論を一蹴。9月21日に行われた第8節オーステンデ戦ではエースストライカーのムブワナ・アリー・サマッタを中盤に回し201cmのピーター・オヌアチュをCFとして起用。試行錯誤は続くが、CLの次節ホームでのナポリ戦に向けて、体制を立て直したいところだ。

Photos: Bongarts/Getty Images

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ヘンク伊東純也

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シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。