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ナポリの本拠地めぐる押し問答。アンチェロッティ監督の悲痛な叫び

2019.09.16

サン・パオロの工事が遅れる

 14日、セリエA第3節のナポリ対サンプドリア戦が、ナポリの本拠地スタディオ・サン・パオロで無事開催された。サン・パオロは7月の夏季ユニバーシアード開催を機に改修工事をしていたが、クラブ側から大幅な工期の遅れを指摘されていた。

 サン・パオロはナポリ市の所有物。今回の大規模な改修工事も市がイニシアチブをとってやることなっていた。その結果、大型スクリーン2機を設置し、55,000席に収容人数を抑えた上で観客席の椅子の張り替えを行なっている。そして7月の大会終了後は、セリエAの開幕に向けて施設内の改修工事を進める段取りになっていた。だが、これが進んでいなかった。

アンチェロッティ監督、吠える

 この問題を表に出したのは、カルロ・アンチェロッティ監督だった。11日、クラブの公式HPを通じて声明を発表。「サン・パオロの工事中の様子を見せられたが、言葉を失った。工事を終わらせるため、開幕2試合はアウェーで戦ってくれというクラブの要求をこちらは飲んだというのに。2カ月あれば家が建つだろう、それをロッカールームひとつ作れないとは!」と工事の遅れに驚きを述べ、「サンプドリア戦やCLリバプール戦をどこで戦えというのだ? 仕事をちゃんとやるべき人間が、不正で不適切な行動を働いたことに憤慨を覚えている」と責任者を厳しく非難した。そしてクラブは公式ツィッター上で、工事の進んでいないロッカールームの様子を写した動画をアップした。

 だがナポリ市は、内部施設の工事は管轄が違うと反論。ルイジ・デ・マジストリス市長は「あれは市ではなく、カンパーニャ州ならびにユニバーシアード組織委員会の責任で、クラブも協議していたはず。(サンプドリア戦のある)土曜日までに工事は終わらせると聞いている」と語り、組織委員会のジャンルカ・バシーレ臨時委員長は「おそらく誤解があったのだろう。12日の木曜日までには清掃が終わり、13日の金曜日には綺麗な状態で渡せると聞いていた。監督の言葉は残念」と反論した。クラブがアップした映像の中では建具やシンクも欠けたロッカールームの様子が映っており、とても清掃を残すのみとは思えない状態。しかしそれにも市の関係者は「あれこそ“騙し”だ。むしろアンチェロッティ監督に謝罪を要求したいくらい」と地元メディアにこぼしていた。

クラブと地方自治体の関係はぎくしゃく

 とりあえず工事は、13日までに無事に完了。「少なくともシャワーが使えるような状態であってくれれば」と記者会見で語ったリバプールのユルゲン・クロップ監督の懸念は解消された格好だが、アンチェロッティ監督は厳しいまま。「もともと(8月)31日に完了すると聞いていたのに、2日前にずれ込むなら心配するのは当たり前だろう。ともかく議論はもう終わりにするが、工事をギリギリまで伸ばさないことだってできたはず」と真っ当な批判で閉めた。

 スタジアムをめぐり、近代的なサッカースタジアムに見合った改修を望むクラブと、運営の権限を握り多目的競技場やイベント会場として運営したい地方自治体との関係は昔からぎくしゃくしている。アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は「州がユニバーシアードを理由に公共事業予算を勝ち取ってきても、トラックを張り替えたら内部改修の金が工面できなくなったではないか。だったら『お前らがやれ』と言ってくれたら良かったのに」と権限の移譲を訴えた。

 クラブと市は管理協約の交渉中であり、「今回の争論は駆け引きの一環」とある地元紙は報じる。

Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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