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英雄の凱旋……でも君の名は!?ずっと名前を間違えられてきた男

2019.07.10

満を持して古巣に戻って来るのは……

 彼が戻ってくる。イングランド代表でも活躍した彼が、満を持して古巣に帰って来る。プレミアリーグを代表するナイスガイが、一度は別れを告げたクラブに帰って来たのだ。

 誤解を招きそうなので明確にしておこう。これはフランク・ランパードの話ではない。今回取り上げる選手は“Phil Jagielka”である。

彼はエバートンの最終ラインを長らくリードしてきた

 彼は12年も在籍したエバートンを昨シーズンいっぱいで退団し、バーンリーの練習に参加しながら新天地を探していた。そして7月4日、古巣であるシェフィールド・ユナイテッドに加入することが発表されたのだ。

 当然の成り行きである。エバートンで出番を失った36歳の彼は、おそらくキャリア最後となる新たな挑戦を求めていた。一方で、シェフィールドUは13シーズンぶりのプレミアリーグ復帰。チームを率いるクリス・ワイルダー監督は下部リーグでは名の知れた名将だが、プレミアに関しては初挑戦となる。だから経験値が必要だったわけで、“Jagielka”はうってつけの補強なのだ。

 前回、シェフィールドUがプレミアに所属した2006-07シーズン、“Jagielka”は同クラブで万能選手として活躍。中盤や最終ラインだけでなくGKまで務めた。さらに“Jagielka”は……と話を進めても、読者の皆さんはアルファベット表記が気になって仕方ないはずだ! もちろんアルファベットで表記しているのには理由がある。

万能すぎて、DFとMFだけでなくGKまで務めてしまった“Jagielka”

ポーランドにルーツを持つ英国人……君の名は?

 ご存知の方もいると思うが、“Jagielka”はポーランドにルーツを持つイングランド人である。彼の祖父母はポーランド人で、第2次世界大戦中に戦火を逃れてイングランドにやってきた。とはいえ彼本人はマンチェスター生まれであり、「ポーランド代表でもプレーできるが、自分はポーランド人だと思わない」と語ったことさえある。だから英国の大半のコメンテーターも、自然と彼を「ジャギエルカ」と呼んできた。そのため日本でも「ジャギエルカ」という名前で認知されているはずだ。

 だが先日、エバートンでの彼の功績を称える記事に気になる一文があった。「21世紀のエバートンの象徴」と題された『リバプール・エコー』紙の記事に、こう書かれていたのだ。「20年近く名前の呼び方を間違えられても気にしなかったいい人」……。なんと、2000年にプロデビューした彼の名前は「ジャギエルカ」ではなく「ヤギエルカ」だというのだ。本人自ら、そう発音しているというのである!

 たしかにポーランド人ならば「ヤギエルカ」の方が正しい発音になる。だがイングランド代表選手が、20年近くも発音を間違えられるだろうか? そこで本人が自己紹介しているYouTubeの映像をいくつか確認してみた。そして、ようやく謎が解けた。彼は自己紹介する動画の中で、はっきりとは「フィル・ヤギエルカ」と発声していないのだ! 筆者が見つけた動画では「フィル・ギエルカ」くらいにしか聞こえないのだ。さらに彼は、司会者などに「ジャギエルカ」と紹介されても訂正していないのである。

 思い出されるのは現マンチェスター・ユナイテッドの指揮官、Ole Gunnar Solskjaerである。彼は幾度となく名前の発音を聞かれてきた。そして説明しようと試みるも、いつも最終的には「オレと呼んでね」と諦めてしまうのだ。2人の共通点は、やはりどちらも“いい人”ということだ。

 どうやら、新シーズンの“ユナイテッド”の命運を握るのは、名前にこだわらない“いい人”のようだ。


Photos: Getty Images

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エバートンフィル・ジャギエルカプレミアリーグ文化

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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