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デ・ニーロにトム・クルーズ? 愛するチームの配役を妄想する映画監督

2019.06.23

スコットランドで語り継がれる英雄たち

 スコットランドには英雄として語り継がれるチームがある。たとえば「Lisbon Lions(リスボンのライオンたち)」がそうだ。

 1967年にイングランド勢よりひと足早く英国のチームとして初の欧州制覇を成し遂げたセルティックのことだ。リスボンでの決勝戦では、60年代にヨーロッパを席巻していたインテルを撃破。決勝メンバー15名のうち14名が本拠地セルティック・パークから16km圏内で生まれた地元の青年たちで、栄光をつかんでみせた。

 知名度では劣るものの、そのセルティックに負けない偉業を成し遂げたのが「Gothenburg Greats(ヨーテボリの偉人たち)」ことアバディーン。彼らはセルティックとレンジャーズの2強以外で最後にスコットランドリーグを制したクラブだ。そんな彼らが英雄の称号を手にした試合こそ、1982-83シーズンのカップウィナーズカップ決勝戦である。

 若かりし日のアレックス・ファーガソンが率いたアバディーンは、あのレアル・マドリーを倒してクラブ史上初の欧州タイトルを手にしたのだ。白い巨人が欧州3大タイトルのうちカップウィナーズカップだけ獲得できていないのは、彼らの前にアバディーンが立ちふさがったからなのだ。

もし「偉人たち」を映画化するなら……

 なぜ今この時期に彼らの話をするかというと、アバディーン出身で地元クラブの大ファンだという映画監督のジョン・S・ベアードが先日、「ヨーテボリの偉人たち」を映画化するなら誰をキャスティングするかについて語っていたからだ。

 今年4月に日本でも公開された『僕たちのラストステージ』でメガホンをとった監督は、少年のような無垢な表情で『BBCスコットランド』に理想を語っている。

 まずはファーガソン監督からだ。「ゴッド・ファーザーはゴッド・ファーザーが演じるべき」とマーロン・ブランドを配役。次に守護神ジム・レイトンには、映画『勝利への脱出』でGK役を務めたシルベスター・スタローンを推す。そして後にスコットランド代表監督を務めることになるDFアレックス・マクリーシュは、「品格があったのでダニエル・デイ=ルイス」が演じるそうだ。

 どんな状況でもまったく動揺しない主将ウィリー・ミラーは“初代ジェームズ・ボンド”のショーン・コネリー。それから「ライトセーバーのように切り裂くパス」が得意だった左DFジョン・マクマスターは『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミル。のちにファーガソン監督と共にマンチェスターUでも活躍するMFゴードン・ストラカンは、ピッチ上で「常に戦い続けていたのでブルース・ウィリス」が適役だという。

 ウイングのピーター・ウィアは魔法のような足技が得意なので『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフ。そして「怒り狂った牛」のように相手を打ち負かしたFWマーク・マギーには、『レイジング・ブル』でアカデミー主演男優賞に輝いたロバート・デ・ニーロを起用する。

 FWエリック・ブラックは滞空時間の長いヘディングが得意だったので、『ミッション:インポッシブル』で宙に浮いたトム・クルーズだ。そして最後はFWジョン・ヒューイットである。決勝の延長戦に「決勝点を奪ったスーパーヒーロー」なので、『スーパーマン』のクリストファー・リーブを使いたいという。

 今は亡き名優までキャスティングした豪華な顔触れで予算が心配だが、自分の愛するチームの映画化を妄想するのはサッカーファンの特権だろう。

Photo : Getty Images

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アレックス・ファーガソン文化

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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