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「国歌にブーイング」事件に見るスペイン自治州独立問題の根深さ

2019.05.27

バルサ、コパ・デルレイ決勝で敗れる

 25日、コパ・デルレイ決勝が行われた。

 マルセリーノ監督やキャプテンのパレホの歓喜の涙を見ていて、順当な勝利だと思えた。クラブ創立100周年、11年ぶりの優勝を目指したバレンシアに対し、4連覇中のバルセロナは貪欲さに欠けた。30分ほどで0-2とされ、最後はピケとビダルをCF化し放り込みを続けたが、届かなかった(1-2)。

 ルイス・スアレスは右膝の治療中で不在だった。この時期に手術をしたのはコパ・アメリカに間に合わせるため。もしチャンピオンズリーグのファイナリストだったら手術はしていなかったはずで、アンフィールドの悪夢の後遺症という見方もできる。

いつものように、ブーイング

 その決勝前の国歌吹奏で、いつものようにブーイングが飛んだ。

 コパ・デルレイ=国王杯では、国王に捧げる曲として国歌が演奏されるのだが、バルセロナファンの中にはカタルーニャ独立を支持し、スペインとその国歌に反発する人たちがいる。独立問題がこじれ始めたのがここ10年ほどで、特に最近は最大の政治問題となっているが、それと歩調を合わせるようにバルセロナが6年連続で決勝に進出。ブーイングが恒例化してしまったわけだ。

 もちろん問題になる。

 “サッカーを政治化してはいけない”という正論も出るわけだが、代表戦は常に国威発揚の場だったし、政治化は今に始まったことではない。実際問題として数千単位の口を塞ぐことは不可能でもある。国民的合意を得られないためスペイン国歌には歌詞がなく(これ自体が独立問題の反映)、そのためブーイングの音量に圧倒されやすい、というのもある。

過去にはバルサ対ビルバオで……

 よって、過去にはブーイングのインパクトを軽減するための操作が行われてきた、とされている。

 有名なのは2009年決勝の、国歌部分を生中継せずハーフタイムに録画で流した事件。中継担当の国営放送は「人的なミス」と謝罪したが、この年の顔合わせがバルセロナ同様バスクで独立問題を抱えるアスレティック・ビルバオだったことでブーイングが最高潮だったことから、疑惑は消えていない。

 同じ顔合わせの2012年決勝では、国歌吹奏が始まると集音マイクのボリュームが下がり国歌のボリュームが上がる、という事件があった。音量の変化があまりに不自然なので多くの視聴者が気付き、元の音源と操作された音源を比較する報道が相次いだことで逆に騒ぎを大きくした。

 最近のサッカー界では、ロシア・ワールドカップ決勝でのプッシー・ライオット乱入事件のように、都合の悪いスタジアムでの出来事は放送しない、という方針だ。闖入者や政治的な垂れ幕の映像はお茶の間には届かないわけだが、さすがに国歌を無視するわけにもいかない。結局、ブーイングの度に独立問題を再確認することになっている。

Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。