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ラングニックも絶賛する青年監督。ブレーメンのコーフェルト(後編)

2019.05.23

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 日本代表ストライカーの大迫勇也が所属するブレーメン。このトップチームの指揮官、フロリアン・コーフェルトは現在ドイツ国内で台頭しているプロ経験のない若手監督の1人だ。

 彼ら若手監督で興味深いのは、ブンデスリーガの監督になるまでの、それぞれのプロセスだ。指揮官を見極める目がたしかなRBライプツィヒのラルフ・ラングニック監督も認めるコーフェルト監督のキャリアを辿る。

「クラブ付きアマチュアGK」という異色の出自

「私が率いたチームでも、彼ほど練習試合でキーパーを務めた選手はいませんよ」

 地元紙『ダイヒシュトゥーべ』のインタビューの中で笑いながら振り返るのは、現在はブレーメンで育成統括を務めるトーマス・ボルターだ。ボルターがU-23チームを率いていた当時、大学生だったコーフェルトは、アマチュアの第3チームでGKとしてプレーしていた。U-23のGKはトップチームのトレーニングに駆り出されることも多く、その穴を埋めていたのがコーフェルトだったのだ。

 ブレーメン大学では公共福祉とスポーツ学を学び、ディートリッヒ・ミルズ教授のもと、他の学生たちとドイツサッカー連盟Bライセンスのための1コースを構築した。そのコースは、若い選手たちのための性格形成と成長に関するものだった。

 このことからも分かるように、コーフェルトの優れている点は、サッカーの知見はもちろんだが、選手たちとのコミュニケーション能力にもある。「U-17でアシスタントコーチを務めていたとき、クラブ内部でのリスペクトを勝ち取りました。サッカーの知識はもちろんですが、彼の社会的な面での能力に皆が一目を置いていました。選手が学校で問題を抱えているときは、彼は選手たちのサポートに回っていました。勉強では、数学を教えるのが特にうまかったですね」とボルターは当時のことを楽しそうに説明した。

「彼は、信じられないほど優れたチームプレーヤーなんです」

“自然体”で仕事ができる環境が活躍の条件

 すでにブレーメンで活動を始めて14年になるコーフェルト監督は、クラブのことも熟知しており、アシスタントコーチの視点も監督としての役割も心得ている。ブレーメンも“生え抜き”の指導者を無為に捨てるようなことはしない。

 自身がシャルケで“燃え尽き症候群(バーンアウト)”を経験したラングニックは、自身が高く評価するドメニコ・テデスコ(今年3月にシャルケの監督を解任)の状況を引き合いに出しながら、コーフェルトにとってブレーメンが理想的な仕事の環境であるとコメントしている。

「コーフェルトは、いつかもっと大きなクラブで指揮を執る可能性もある。でも、用心しないといけない。ドメニコ・テデスコのケースを見れば、1シーズンだけですべてを判断するのは危険だ。だが、シャルケの不調はドメニコだけに責任があるわけではないのは明らかだ。彼は、クラブから何のサポートも得られていないように見えたからね。ブレーメンからはそんな印象がまったく感じられない」とラングニックは話す。

 そして、自身がマネージャーとして、そして監督として長く経験を積んできたことから、監督が活躍できるための環境づくりが不可欠であることを指摘した。

「ブレーメンには、クオリティが高く、仕事に真摯に取り組む運営責任者のスタッフがそろっている。フロリアン・コーフェルトは、“自然体”で仕事ができているようだ。それは、監督が良い仕事をするためには、重要な要素だからね」

 すでに“長期政権”の予感も漂うブレーメン指揮官の手腕に、ドイツ国内の関心も高まっている。

Photos: Getty Images

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。