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ラングニックも絶賛する青年監督。ブレーメンのコーフェルト(前編)

2019.05.22

古豪ブレーメンに復活の兆し

 今季から日本代表FW大迫勇也が所属したことで、日本国内でも再び注目を集めることになったブレーメン。ドルトムントが台頭する2000年代までは、フランス代表のヨハン・ミクー、ドイツ代表のミロスラフ・クローゼ、トルステン・フリンクス、ブラジル代表のジエゴなどを擁し、バイエルンの対抗馬の1番手であり、欧州チャンピオンズリーグでも常連だった。ところが、この数年は残留争いに巻き込まれ、低迷した時期を過ごしていた。

 2017年の 12月も、残留争いに苦しんでいた。後に引けないブレーメンは、“生え抜き”の若手監督に命運を賭けた。当時35歳のフロリアン・コーフェルトだ。コーフェルト監督は、U-23の監督からトップチームの監督に昇格すると、見事にブンデスリーガ残留を達成。そして今季は、チームを欧州の大会を狙える順位にまで引き上げた。

ラルフ・ラングニックが認める才能

「彼は、大きな才能あふれるドイツ国内の若手監督の1人だと思う。ドイツ国内には、面白い若手監督が数人いるが、彼はそのうちの1人だね」

 リーグ最終戦の対戦を前に、RBライプツィヒの監督を務めるラルフ・ラングニックはコーフェルトをそう評価した。

「タッチライン際でどのように振る舞うのか、観察するんだ。『どんな行動を取るのか? どのように指示をするだろう? 彼の手腕の痕跡は、試合を見ていくうちに見て取れるだろうか?』。そんなことを観察していく。コーフェルト監督は、私が見る限り、それらの基準を絶対的にまで満たしている」

 トーマス・トゥヘルを指導者の道に導き、ロジャー・シュミット、アディ・ヒュッター、ラルフ・ハーゼンヒュットル、そしてユリアン・ナーゲルスマンを登用し、一部では“ラングニック・スクール(ラングニック学派)”とまで呼ばれる一派を作り上げているラングニックが、その能力を認めたのだ。

RBライプツィヒのラングニック監督(右)もコーフェルトの手腕を高く評価する

 移籍情報サイト『Transfermarkt』の推定市場価値は1億4075万ユーロ(約173億円)とリーグ12位ながら、欧州の舞台が現実的に狙える状態にまでチームを引き上げた。同時に、マキシミリアンとヨハネスのエッグシュタイン兄弟、ミロシュ・ラシツァら若手を主軸にまで成長させ、大迫勇也やダビ・クラーセンのような新加入選手もすぐに順応させ、能力をいかんなく発揮させている。なにより、独特の性格で知られる元ドイツ代表のマックス・クルーゼにリーダーとしての自覚を促すなど、マネジメント面でも手腕を発揮している。

 若くして習得されたこれらの能力は、どこで学んだのだろうか。現在台頭する若手監督がそうであるように、コーフェルト監督もまた、プロ選手としての経験がない。当時23歳だった06年からブレーメンの育成機関で指導者のキャリアを始めたコーフェルト監督のキャリアも独特だ。

 後編では、誰もが予想していなかったブンデスリーガの監督になるまでの過程を辿る。

→後編に続く

Photos: Getty Images

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ブレーメンフロリアン・コーフェルトラルフ・ラングニック

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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